おっほ
2012/11/18 16:28


「ねえ、いつになったら苗木くんは僕の子供を孕んでくれるの?子宮に届いてない?もっと入れなきゃだめ?でもここもう入らなそうだよね…どうしよう、一回洗っちゃうってのも手だけど、勿体無いよね。せっかく苗木くんの中にいっぱい精液入れたのに。かき混ぜてみようか。うん、そうしよう。ぐりぐり、て。苗木くんが孕んでくれるその日まで、僕は頑張るよ、ふふ」なんていう長たらしい台詞を狛枝くんに言わせたい。

あの人ガチめなトーンで「孕んで」とか言いそうだから怖い。個人的に「孕んで」という言い方大好きなのです。プロポーズの言葉とかにも「孕んで」を混ぜてくれないかな、狛枝くん。まあ趣味ですけどね、完全に、私の。

それに対し病み苗木くんが「狛枝くんが望むなら孕む」なんて言っちゃったり。実際男なんで孕むことはありません。言葉遊びですね。可愛い。




▼日苗没文章


夕暮れどきの砂浜。なんだか元気がない苗木を散歩と表し連れ出してきたところまでは良かったが、このあとどういう会話をしようだとか何をしようかとかまでは考えていなかった。
結果として二人の間には沈黙だけが流れ、視線だけを彷徨わせ何か話題を作ろうとする。しかし、そんな焦りなど苗木は露知らず。
あ、と何かに気付いたような声を上げたたたっと走って何かを拾い上げた。俺も慌てて後を追う。

「日向くん」
「なんだそれ」
「ビー玉かな」

きらきらと夕日を浴びて色んな色に変化する小さな玉。苗木は手のひらの上で転がしながら俺に見せてくる。
なんで海にビー玉があるんだろう、あぁどこからか流れてきたのかな、と思うことにして俺もそのビー玉を見下ろした。
子供のおもちゃ。転がしたり見て楽しんだりするただのおもちゃなのに、そこに夕日をプラスするだけでここまでロマンチックに光り輝くとは。
なんとなく救われた気分になりながら「綺麗だな」と笑う。苗木も笑いながらビー玉をポケットに詰めた。

「持って帰るのか?」

つい聞いてしまえば苗木はぽけっと顔を一瞬見せ、すぐに顔を真っ赤にさせ慌ててポケットからビー玉を取り出しぽいっと投げ捨ててしまった。
弧を描きながら海にぽちゃん、と落ちていったビー玉を目で追いながら「え」と驚くと、苗木は顔を小さく振りながら言い訳のように呟く。

「…いや、持って帰らないよ」
「いや、ポケットに入れたんだ。持って帰るつもりだったんだろ」
「ち、違う」
「…?じゃあなんでポケットにいれたんだ?」

何をムキになっているのか。必死に否定する苗木はあからさまに視線を彷徨わせ口をもごもごとさせる。
咄嗟の言い訳というのが思い付かないらしい。別に嘘なんてつかず、持って帰りたかったのなら持って変えればいいのに。
再度「苗木」と名前を呼べば当の本人はうっと言葉を詰まらせたように顔を歪めた。悔しそう、とかではなく、薄暗い顔色。
何か言おうとしているのに上手く言葉に出来ないのかなんなのか、口を少し開け、閉じて、の繰り返しで俺は軽くため息をついた。
そのため息に苗木が過剰に反応しびくりと肩を揺らす。あぁ違う、お前のことが不愉快だからため息をついたわけじゃないんだ。気にしないでくれ。

「……」

とりあえず、海に投げ込まれたビー玉に再度視線を持っていく。青い綺麗な海がざざざ、と寄っては引き返してを繰り返し、ビー玉の姿など見えなかった。
もし目に届くところにあったのなら今すぐにでも拾って苗木にあげたかったが見当たらないのならどうしようもない。
困ったな、と内心思えば苗木がついに口を開く。

「…ビー玉とか、おはじきとか、なんか好きなんだよね」

子供みたいだよね。苦笑しながら苗木は言うが、別段俺はそのことに対し何も思わなかった。
別にきらきらしたものが好きという人はいるだろうし、そういうのは好みの話。恥ずかしがるようなことは何もないのでは、と思いながら苗木を見たが、その顔は少し暗い。
何をそんなに悲観しているのか俺にはまったく分からない。分からなかったが、素直な気持ちをそのまま口にしてみた。

「…別にいいんじゃないか」
「え?」
「俺も好きだぞ。ビー玉とかおはじき」

きらきらしたものが好きというわけではないが、懐かしさを感じさせられるビー玉やおはじきは嫌いではない。寧ろ好き。
はっきりとそう伝えれば苗木はきょとんとした顔を見せ、すぐにくしゃりと笑ってみせた。でも、まだその顔は暗い。

「そっか」
「あぁ」

仄暗さをまとう声音で呟く苗木。一体どうしてしまったのだろう、心配に思い苗木の肩に触れてみれば、彼は自分に言い聞かせるように呟いた。

「子供、だね。僕も日向くんも」

何を急に言うのか。それに対し笑って「そうだな」と返したが、その時苗木の顔が今にも泣きそうなことには気が付かなかった。「苗木なんて見た目も子供みたいだしな」なんて笑って言ってしまったわけだが、苗木のスーツの下にある銃の弾倉が一つ空洞なことを知っていたらもっと他の言葉を言えたんだろう。落日。





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