「いらっしゃいナマエ」
「あら、ユリウスが出迎えてくれるなんて珍しい」
「今日は早く仕事が上がってね。君こそどうしたんだ?」
「リーゼ・マクシア産の野菜が手に入ったからお裾分けに。ほら、いい色してるでしょ」
「ああ、美味しそうなトマトだ。しかしこんなに立派なもの、高かっただろう」
「知り合いにちょっと融通してもらったの。気にしなくても平気よ」
「そうか、ありがたいな」
「ほかの野菜も新鮮だから早いうち食べてね」
「その……よければナマエに夕食を作ってもらいたいんだが、頼めるだろうか」
「えっ、私よりルドガーが調理した方がおいしく仕上がると思うけど」
「それがルドガーは友達と出掛けていてね。夕食をどうするか悩んでいたところなんだ」
「そうなのね。私は構わないけど……勝手にキッチンを使っても大丈夫かしら」
「俺の家だ、問題ないよ」
「キッチンはルドガーの領域でしょう。それなら一度、ルドガーに電話してみたらいいわね」
「頼む。ひとまず、中でお茶でもどうだ?」
「ありがとう。お邪魔するわ」

「……ルドガー? あのね、今日キッチンを使わせてもらってもいい? ……うん、リーゼ・マクシア産の野菜を持ってきたんだけど、ちょうどユリウスが夕食に悩んでいたから私作ろうと思って…………えっ? 大丈夫なの? お友達は……ちょっとルドガー? もしもーし! ………………ダメだわ、切られちゃった」
「ルドガーはなんだって?」
「自分も作りたいから今から帰る! って。かなり慌ててたわ」
「ははは、まだあちらの食材は流通が少ないからな。使ってみたいんだろう」
「ほんと、料理好きね。ルドガーが帰ってくるのなら私の出番はなさそう」
「せっかくだ、ナマエの手料理も食べてみたいな」
「うーん、ルドガーのと比べたりしないでね」
「料理の腕は愛情でカバー出来るものだと聞いたが」
「料理しないユリウスがそれを言うの?」
「きっと美味しいものが出来ると期待しているよ」
「もう、プレッシャーもらっちゃった。ユリウスはずるいわね〜ルル?」
「ナァ〜?」


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