「休憩時間外のデスクでの食事はあまり認められないんだが……」
「す、すみません。昼食のタイミングを逃してしまって、もう食べ終わりますっ」
「ああ、いや。そう急がなくていい」
「ありがとうございます……」
「そういえば、ナマエが担当する企画は期日が迫っていたな」
「ええ。本日中にデータを提出できる見通しです」
「仕事が早くて助かる。……君の食事を見るのは初めてだが、いつも弁当なのか?」
「はい。お弁当用のレシピをあまり知らなくて、ほとんど冷凍食品ですけど」
「それでも毎日用意するのは大変だろう」
「ユリウスさんもお弁当を持参してるって聞いたことあるんですが、ご自分で?」
「身内に料理が得意な者が居てね。よく作ってもらっているんだ」
「へえー手作りだなんて、素敵な奥様ですね」
「……一応言っておくが、俺は結婚していないぞ」
「えぇ!? あっ、そうですね! ユリウスさんが結婚されていたら大ニュースになりますしね!」
「そんなに大げさに騒がれても、反応に困るな」
「ごめんなさい、お弁当から連想してしまいました」
「……いや、俺もいい年だとは自覚している。作ってくれるのは弟なんだ」
「なるほど。良い弟さんですね、羨ましい」
「そうだ。ナマエさえ良ければ、今度、弁当に向いた簡単なレシピをいくつか聞いてこよう」
「わっ、すごく助かります! 冷凍ものってどうしても味に飽きるんですよ」
「栄養管理の面でも、手作りのほうが何かと応用が利くだろう。それも考慮して……ん、どうした?」
「いえ、ユリウスさんが仕事以外の話をするのは珍しいと思いまして。弟さんと仲が良いんですね」
「そうか? まあ、手はかかるが可愛い弟だしな」
「兄弟仲が良くていいですねぇ。こういうのなんて言うんですっけ、末永くお幸せに?」
「いや、それは使いどころが違うと思う」
「えっ!」


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