「目立つね〜」
「なんて悠長な」
真太郎が食堂に入ってくることは珍しい。ただでさえ目立つ真太郎がさらに目立っていた。隣に立つ美人な女の人も同様で、主に男子に騒がれていた。
「中学の時からそうだったし……馴れと言うか。あっ」
「え、なに」
「目が合った。こっちに来そうな予感が」
「うっそ!」
本当です。
ガン見していたお陰でふとこっちを向いた真太郎と目が合ってしまった。非常にまずい状況……いや私は特にそうでもないのだが。どちらかと言うと真太郎の方がやばいとか思っているのかも。
でもこちらにスタスタ歩いてくる真太郎の顔をする見る限りそんなことも無さそう。そんなことより、隣を歩いていた女の人も何故か着いてきた事の方が一大事である。
「何をそんなに見ているのだよ」
「真太郎が食堂にいるの珍しいなって。女の人連れて」
「…………」
「…………」
微妙な空気。そのせいで友達はなんかあわあわしてる。
真太郎の後ろにいる美人さんに目を向けると、視線が交わってしまった。心なしか、いやこれは確実に睨まれている。
「緑間君、お昼の時間無くなっちゃうし早く行こう」
「先に行っててくれ」
「……分かった」
不満そうな顔で私をじっと見た後、素直にその場を去った美人さん。後ろ姿もとても綺麗だった。
「なまえ」
「な、なに」
「変な誤解をしてみろ。家具を全て緑色にしてやるのだよ」
「嫌がらせか!」
目に優しそうだとかちょっと考えてしまった。
「誤解じゃないでしょ、今の」
「大丈夫なのだよ。俺も今確信した」
「確信したってなにが?あの子が自分のこと好きだって?はぁ……モテる男の考え方は違うね」
ああ駄目だ。イライラして真太郎の勘に触るような事を言ってしまった。馬鹿すぎる。
「あの状況じゃお前がそう思ってしまうのも無理はないな」
私の思いに反して真太郎は落ち着いていた。
「今は詳しく話している時間が無いから家に帰ってから話す。彼女にも俺から話しておく。とにかく、お前は何も心配する必要はないのだよ」
こんなにはっきりと言うものだから、私はもう何も言えなかった。
それじゃあなと彼女の後を追うように去っていく後ろ姿を眺めながら、小さく溜め息をついた。
「お疲れ様」
「……ありがと」
労るような視線を私に向ける友人二人に軽く礼を言って、残りのお弁当を食べようと箸を持ち直した。
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