真っ赤な幸せ | ナノ

飲み会(小規模)


今日は我が家に私の幼馴染みである坂道を招いている。今泉君も誘ったのだけど都合がつかなかったらしい。

鍋をつつきながらビールやら酎ハイやら。呑み過ぎじゃないか?と私は少々呆れ気味に、顔を赤くした婚約者を見た。


「だからなぁ、小野田くん、赤っちゅーのはな、」

「な、鳴子君」

「ちょっと章吉、その話何回目?」

「なに言っとんねん!まだ一回目や!!」

「顔赤いよ、呑みすぎ」

「カッカッカ!」


酔っているせいかいつもより声が大きい。比較的あまりお酒は飲まない坂道は、酔っている章吉の聞き役に徹底している。というか絡まれているだけなんだけど。

お酒がまわっているものの、章吉が笑っている姿を見て少し嬉しく思っていた。やはりかつてのチームメイトと話すのは楽しいようだ。お酒がいつもより進んでいる。


「あの時ワイは感動した!!」

「いきなり話飛んだけどあの時ってどの時?」

「あの、あれや……えっとなぁ、あれやって!」

「ええー……」

「分からないよ鳴子君」


坂道も苦笑しながら私と目を合わせた。


「それにしても、婚約かあ……早いね、もうそんなに経つなんて」

「羨ましい?羨ましいでしょ?」

「羨ましいやろー!相思相愛、四面楚歌や!!」

「それじゃあ敵に囲まれてるよ鳴子君」

「あっはっはっ!!やばいそれ章吉天才!あっはっはお腹痛いっ」

「いやほんと、なまえと鳴子君てお似合いだよ……」




***




「鳴子くん寝ちゃったね」

「幸せそうな顔しちゃって……よだれ垂らさないでよね」


床に倒れ込むように眠る章吉に、押し入れから引っ張り出してきた薄め毛布をかける。
章吉程ではないとは言え、坂道も少し顔が赤かった。


「坂道ぃー、考えてくれた?司会進行」

「司会進行じゃなくて代表スピーチでしょ」

「そうだっけ」

「なまえ、わざとは駄目」

「ふふ、さすがにどっちもはやらせないよ、大丈夫。司会進行は今泉君だから」

「え!今泉君に頼んだの!?」

「うん。章吉がね」

「ええええ!!」

「坂道あいかわらずのオーバーリアクション」


ばっと口を両手で塞いで少し申し訳なさそうな顔をする坂道。どもりながら喋るのは無くなったものの、こういうところはいつまでも変わらない。


「鳴子君が、今泉君に……」

「面白い事になるよね絶対」


それに、章吉は確実に高校時代の自転車競技部の先輩や後輩を呼ぶだろうから、今泉君の司会進行に野次が飛んできそう。主に章吉からの。


「小野田君!!!」

「うわぁっ!!」

「ひいっ!?」


ただの寝言のようだ。

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