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三日月の夜
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「――こんばんは、藍染隊長」



月が高々と昇っている。

「叶華……」

藍染は暫く顔を見せなかった同期の名を呼んだ。

「少しお話しない?」

2人は清浄塔居林へ入った。
本来完全禁踏区域であるそこへ立ち入れる理由を分かった上で。










「今度は派手に掻き乱してるのね…」


瀞霊廷は現在、旅禍の騒ぎでてんてこまいだ。

叶華は静かな空を見上げた。

「ここを……捨てていくつもり?」

藍染に向き直ったその表情は、少し寂し気だった。

「…仕方のないことだよ」
「みんなきっとびっくりするね…」

藍染といえば隊長の中でも穏健派で有名だ。



「私たちが惣右介に抱いた幻想と一緒に全部、……全部なかったことにするみたいに躊躇せずに捨ててくんでしょうね…」



窓枠に腰掛ける叶華。

藍染は叶華に歩み寄り、手を伸ばした。

「叶華は……僕と一緒に来てはくれないだろう…?」

伸ばされた手を取らないのが答えだった。

「否定するかい?――僕のやり方を」
「しないよ、私はしない」

叶華は藍染の頭を抱く。







「惣右介は嘘つきだよね…昔から。

でも嘘でしか自分や大切な人を守れない人もいるから。
…優しい嘘だってあるはずだよ」




((貴方の嘘は貴いもの))
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「てっきり誰かに打ち明けると思っていたが…」
「信用無いのね、私」
「信じたいから疑っていたんだよ」
「そう。それで、私は信じてもらえた?」
「あぁ…。君は最初から最後まで君だったよ」


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