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失言少女
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深夜、秘密の恋人が布団の中で囁いてきたのは、可愛らしい言葉だった。







「ねえ惣右介、"好き"って言ったら怒る?」





「怒らないよ。その理由がないじゃないか」


柔らかな頬を撫でてやれば、顔を綻ばせる叶華。

年下は年下でも大分歳の離れた子供のような反応は、僕が気に入っている彼女の素敵な一面だ。

布団の中でこうも愛らしくされると構ってやりたくなる。



「それじゃあ言うね!」


明るく続けた言葉に手を止める。

そして思い出す。

叶華は純粋だしたまに抜けているが、自己防衛意識は強いことを。つまり、何か怒られることを言うときには事前に言質をとって予防線を張るのだ。








「わたし市丸ギンくんのことすっごく好き!」









前言撤回、怒る。



「何を言っているんだい?
叶華は"私"の恋人だろう?」

「うん、惣右介のことはもちろん好きだよ!」

躊躇のない返答は評価しよう。だが、


「でも好きなものって1つじゃないでしょ?お酒が好きって言う人はおつまみも好きって言うみたいに。
市丸ギンくんもそんな感じで好きなの!」


叶華は予防線は張るくせに、どこまで言ってもいいかの判断がつかないらしい。

はっきり言ってお馬鹿さんなわけだ。



「では叶華は、夫婦の誓いを立てたものが他の男と不貞を働いても構わないと言うのかな」

「それはダメだよ!
でも好きになるのは仕方ないことじゃない?それに私たち結婚してないんだから」



聞けば聞くほど腹立たしくなる。

「……叶華」

「ん、なに?」










「"でも"が多いね、私は言い訳ばかりする子は嫌いだよ」





「え、え?え?えぇぇ?どうして急に怒ってるの?
怒らないって言ったのに」

漸く私の機嫌に気付いたらしく困惑している。

「いつも言ってるだろう、私は嘘もつくと」

貸していた腕を抜き、小柄な叶華に覆い被さる。


「ズルい!私は惣右介に本当の事しか言わないんだから惣右介も嘘つかないで!」

「無理な相談だよ」

服に手をかけると身を固くする叶華。



叶華は何かと言い訳をするが、彼女は"口にすることは"本当の事しか言わない。

故にあの平子真子ですら私たちの関係に気付かない。

公然と私を好きだと言ったとして、その直後に平子真二にも好きと言え、その言葉に偽りはない。

時に先程のようにいらないことを言ってしまうのだが、良くも悪くも正直者なのだ。





「さて、浮気性の恋人はしっかり躾ないといけないな」





((正直者が馬鹿を見る))
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「そうだ、一応聞くけどギンのどこが好きなんだい?」
「ン、……強い、とこ……あと、顔とか嘘っぽいとこ、とか……大事な人がいるとこ」
「……ならば良かった。私はちゃんと叶華の好きの基準に入っているようだ」
「あたりまえ、でしょ…?いっつも、言ってる……好きって」
「あぁ、本当によかったよ………叶華の好きの基準に"優しい"なんてものがなくて。
心おきなく叶華を躾られそうだ、この体の奥の奥まで」


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