01 == == == == == あおえ、と舌足らずな声に呼ばれた。 振り向いて視線を下ろせば主の子供が立っていた。 眩しいくらいの真っ直ぐな笑顔で見上げてくる。 その後ろ手には何かが隠されているようだが。 「なんだい?」 膝を折れば目線が近付いた。 それでもまだ青江の方が高くて、夢叶に髪を引っ張られた。 「僕は玩具じゃないんだけどねぇ」 髪のことだよ?と言ってみるが夢叶は気にした様子がない。 「はいっ」 目の前に小さな塊が差し出された。 さて何かな?と考えていると甘いにおいがした。 「今日のおやつかな。 僕にくれるのかい?」 「はいっ」 急かすように近付けてくるので口を開けてやった。 すると小さい塊が口の中に押し込まれた。 以外にもそれは柔らかく、押し込まれても苦しくはなかった。 「おやおや、強引だねぇ」 甘いそれを飲み込んで言えば後ろ手の物を出してきた。 「おいしい?」 「あぁ、美味しかったよ」 小さな円柱型の容器に入っているその塊。 夢叶が抱えていると実際より大きく見えた。 「じゃあ、あーんして!」 ん!と容器を差し出してくる。 してくれるのではなくしてほしいのか、と受け取る。 手袋越しでも柔らかさがよくわかる。 少し面白くて力を入れてみた。 「ぶにってなる!」 潰れると怒られてしまった。 「ほら、口を開けてごらん」 すると従順に口が開かれ、そこに塊を入れる。 もちろん、押し込むなんて乱暴な真似はしない。 口から落とさぬようにか両手で口を覆っている。 「美味しいかい?」 すると目を輝かせて首を縦に振った。 「じゃあもう1つ食べるかい?」 返事の代わりに口が開かれた。 ふふ、と笑ってまた入れた。 「君の口には少し大きかったかな」 リスのように頬を膨らませる夢叶を笑う。 その後も親鳥が雛に餌を与えるかのように、口が開く度にプチシューを入れてやる青江だった。 すると主が走ってきて2人揃って怒られた。 どうやら1日3つまでのおやつで残りは夢叶の両親が食べるものだったらしい。 子供におやつを食べられて怒るなんて、子供だねと笑っておいた。 ((手袋まで食べてはいけないよ)) == == == == == == == == == == 「僕に懐く子供がいるなんてねぇ……」 「ん!」 「はいはい、君はミカンの白いとこ苦手だろ。少し待ってほしいな」 「ん……」 「ねぇ貴方、あの子の親って私たちよね?」 「あぁ。青江は……そうだな。おやつ当番だ」 | |