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- ナノ -

01
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「老いましたねぇ、貴女も」



僕は持ってきた薬を主の前に置きました。

すると嫌そうな顔をするので僕も同じ顔をしました。

僕だって好き好んでこんな不味そうな薬を運んでいるわけじゃありません。味についての文句は薬研にどうぞ。

「私は貴方たち神様とは違うからね……」

「神は神でも末席の付喪神ですがね」


僕は鍛刀によって顕現した刀。

そして僕の外見はあの時のまま。

主は決して手入れを欠かさなかった。
だから怪我を負ったままの刀も折れた刀もいない。

最初こそ嫌みを言いましたが、主の本質なら仕方ありません。




「さ、ちゃんと薬を飲んでください」




でないと僕が薬研に文句を言われるんですから。

こういう時だけ甘やかすな、とか。

別に普段が厳しいわけでも今甘やかしているつもりもないんですが、何故でしょうねぇ……。


「もうちょっと苦味はなくならないかねぇ……」

「そんなことは薬研に言ってください」

かと言って、このお役目を誰かに譲る気はありません。

普段は(今までの話ですが)凛とした態度の主が、この薬にだけは嫌そうな顔。こんな珍しいものを誰に譲れると言うのか。

先程は嫌な顔を返したと言いましたが少し違います。

あの主がこんな顔をするのだから少し位マシな味になっても良いと思っていました。


あぁ、こういうところが甘いと言われるんですかね…?




















「宗三………何か甘いものでお口直ししたいねぇ…」




僕の視線の下、何とか薬を飲んだ主。

見た目は老けましたがそういうところは愛らしいですね。
たまには誉めて頭を撫でてあげましょうか。

あぁそうではなく、甘いもの?

「僕でも見て苦味は忘れてください」

取りに行くのが面倒です。

大体、厨の連中が聞き付けると行けませんから。
甘味を持ってくるついでに居座られでもしたら……。

折角の時間に他人がいるのは許せません。



「宗三は目の保養にはなっても味はねぇ……」



なんです、その僕が美味しくない男みたいな言い方。

「では口付けでもしてさしあげましょうか?」
「遠慮するよ」

つまらないですね。


貴女が動き回らず、僕の言葉にも薄い反応しか見せないなんてつまらないですよ、本当に。



((今は貴女が籠の鳥ですね))
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「手もしわくちゃですね…」
「宗三の手はすべすべだねぇ」
「なんです、嬉しそうに」
「ん?いや、宗三から触れてくるなんて珍しいからね」
「別に、理由がありませんでしたから」
「うんうん、青江にも見習ってほしいねぇ」
「……他の男のことなど知りません」


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