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- ナノ -

01
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「時が経つのは早いものだねぇ。
主に会ったのが昨日のことみたいだよ」




僕は主が休むその傍で感慨深く呟いた。


初めて肉の体を得た時、目の前にはとても嬉しそうな顔をした人間がいた。

このお人好しは僕の名前を"変わっているけど覚えやすくて良い"なんて言って笑った。


主は"にっかり"というのが気に入ったらしい。

僕に度々笑顔を求めてきた。

別に笑うのは苦じゃなかったから、主が喜ぶならと笑顔でいた。

でも、月のもので苦しそうな時まで笑顔を求められた時は困った。苦しむ主に笑顔を向けて良いのか、なんてらしくもなく迷った。


主が笑顔なら僕も嬉しい。いつしか無意識に笑っていた。





「そう…かい?
……あたしにゃ昔の話すぎてはっきり思い出せんよ……」





残念、と笑えば主も小さく笑った。

本当に残念だ。
僕はこんなにも主のことを覚えているのに。


でもまぁ仕方ないか。


主は人間だから。

人間だから僕たちの生に付き添えず死に行くことも。大切な記憶が抜け落ちていくことも。

そう、全部仕方ないこと。



大丈夫だよ。

主が人間だからといって、人ならざるものにしようなんて思わないよ。僕はにっかり青江だからね。

命の大切さはちゃんと理解しているさ。






この世で僕にとって何よりも尊い主の命を弄んだりはしないよ。


化けて出た主を斬る刀にはなりたくないからね……。




((だから、ね?自分の寿命を生きなよ))
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「……障子を…開けておくれ」
「駄目だよ。外は冷えてるんだ」
「新鮮な空気が欲しい…」
「おやおや、ワガママだねぇ」


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