01 == == == == == 「――主」 勘違いでなかった気配。 聞こえた声に書物を捲る手を止めた。 「蜂須賀」 「………入っていいか?」 「怖いな、――何?」 先程の大広間での事かなと考える。 「……入るぞ」 そう言って障子を開けた蜂須賀は内番着だった。 そうだ、今日は馬当番にしたのだった。 「………」 「黙っていては分からないよ。内番に文句を言いに来たのかい?前回浦島とならしないこともないと言っていたから…」 「違う。俺が言いたいのは、」 蜂須賀の目を見て何となく気付いていたが、内番の話に逸らそうとした。……のだが失敗のようだ。 「………俺は主の話に納得できない…」 やっぱりそれか、と内心ため息をつく。 「大体"本丸を去る"とは何だ」 この本丸が主の居場所だろ、と。 それで政府が納得してくれるならなんと簡単か。 「今までそんなことなかったじゃないか」 確かに、今までも何度かブラック本丸を取り締まった。 「それに、あと1週間だと言うなら何故馬当番なんてさせるんだ」 結局内番の文句かと思った。 「馬の世話は大切だよ?」 僕で途絶えるならまだしも、後任が来るのだから、と言う。 「そうじゃないッ」 少し離れて正座していた蜂須賀が詰め寄ってきた。 「主は真作であるこの俺が認めた主だ。それなのに内番なんてしていたら1週間なんてすぐ潰れるだろ」 「あー……」 蜂須賀が言ったことを頭で整理して推測する。 彼が何を言いたいのか。 「……――寂しいのかい?」 「――ッ、違う!」 推測を間違えたかなと首をかしげる。 「真作であるこのおれが、他の奴らに遅れをとるなんてありえないだろう。俺は主の側に居ないといけないんだ」 ………やっぱり寂しいんじゃないか? 蜂須賀なりの照れ隠しみたいなものか? んー……良くわからないなぁ………。 == == == == == == == == == == 「あー……要は僕が側に居ればいいのかい?」 「そうだ、だから馬当番は他の」 「わかった。なら僕も今日は馬の世話をしよう」 「なっ、主が馬の世話をしてどうする。だから俺と」 「嫌なら当番を変えるよ。僕は浦島と馬の世話をするけど」 「っ……行くさ、俺は主の側に居ないといけないんだからな」 | → |