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寝た子を起こすな
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戦にて敵を殲滅した、光秀を含めた織田軍。

雑兵の1人すら逃さぬその非情っぷりはもはや各地の将軍に知れ渡っていることだろう。




「まったく……これだから糞餓鬼は…」




悪態をつきながら城に戻った光秀。

不機嫌の理由は糞餓……蘭丸にある。

今日の戦果について、絶対に自分の方が多く殺したとうるさく言われ、なかなか城に戻れなかったのだ。


家臣たちは目を付けられぬようにと早々に散った。

煩わしいものから解放された光秀は湯浴みに向かった。

戦で切り刻んだ多くの敵兵、そして昂りを鎮めるために斬り殺した女子供の血で眠れる状態ではない。

利三に準備だけさせ、あとは下がるように命じた。





「はぁ……邪魔ですねぇ…」


長い髪にこびりついた血を洗い落としながら呟く。

戦闘の際、邪魔になったり手入れが面倒なのだ。

それでも切らないのは、ひとえに空良が「きれい」と、「好き」だと言ったからである。

そうして血を洗い流し終えた光秀。

幾ら面倒でも、手を抜いたりはしない。



髪が乾くまで暫く、落ちきらなかった血の臭いを隠すための香を焚いた部屋で桜舞の手入れに勤しんだ。

血や脂で刃が錆びないように丁寧に。

納得いくまで手入れをすれば、長い髪からも水気がなくなっていた。

「さて、今日はこのくらいにしておきますか」


光秀は暗い廊下を歩き、寝所へ向かうのだった。





途中、月明かりに足を止めた。
今宵は綺麗な満月だった。


光秀は雅なんてものに興味はない。

だが月は嫌いではないが。

何故なら夜戦の時に血を照らしてくれるから。

そんな不純な動機ではあるが、本当に月は好きだった。










寝所に入れば、2つの布団が敷かれていた。



一方は既に使用している者がいる。
扱いとしては、客人である"彼女"は光秀の幼馴染みだ。



光秀は迷わず彼女――空良の布団の方に足を向けた。

寝微かな息をたてる空良を起こさないように、……なんて配慮もなく堂々と布団に潜り込む。

幸い、空良は寝返りをうっただけだった。

そして遠慮なく後ろから抱き締める。


首元に顔を埋め、空良の匂いを肺一杯に吸い込む。

先程の機嫌を一変させるそれはまるで麻薬のようだ。

何度かそれを繰り返す光秀。
空良は起きても怒らないから何度もしてしまう。

漸く満足するが、次は悪戯っ子な指先が動き出す。

着物をはだけさせ、絹の様な柔肌を光秀の冷たい指が這う。






眠り続ける空良と好き勝手に触れる光秀。

お互いに何かを求めることなくその行いに没頭している。



((ピラニアのように))
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「帰蝶、この糞餓鬼をさっさと連れて帰って下さい」
「光秀ぇ〜!また蘭丸を子供扱いしやがったなぁ!」
「本当に鬱陶しいですねぇ……」
「あら、何か用事があるのかい?」
「早く帰らないと空良が先に寝てしまうでしょうが」
「………光秀、上総介様への報告は任せたわ」
「!…帰蝶、貴女まで私の邪魔をしますか」


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