01 == == == == == 夢叶はあの日からずっと眠り続けている。 ウタは夢叶が眠るベッドの端に座っていた。 夢叶の腕には点滴の針が刺さっている。 点滴パックを手に取ると、無性に腹立たしく思えた。 これを用意した奴は本当の夢叶を知っているんだろう、と。 知りたければ聞けばいいだけの話。 "彼"などに聞けば嬉々として教えてくれそうなものだ。 だがウタはそうはしなかった。 「(夢叶のことを夢叶以外の奴に聞くなんて……)」 だから余計な詮索もしなかった。 ただこうして、夢叶が起きるのをじっと待っているのだ。 点滴パックを吊るし、顔色の悪い夢叶の頬に触れた。 艶も肌触りも同じなのに、冷たかった。 ウタは夢叶の首元に顔を寄せた。 ――今日も相変わらず、芳しい香り。 2人を引き合わせたのはこの匂いだった。 ウタはあの日、喰場を荒らす余所者の制裁に出向いた。 だが夢叶を襲った喰種が当初の目的ではなかった。 この香りに誘われて夢叶を見つけた。 「――…ごめんね、夢叶…」 ウタにしては珍しく、心の底から申し訳ないと思った。 気絶する寸前の恐怖に染まった表情。 それを美しいと、もっと見たいと思ってしまった。 そんな自分が夢叶には相応しくないと分かっている。 それでも、どうしても離れがたかった。 ウタは自分の中の相反する感情を自覚している。 夢叶を傷付けてしまうであろう自分も受け入れている。 でも、出来るなら、笑顔だけを見ていたいとも思っている。 怖がらせてしまえば、どこかに逃げられてしまいそうだから。 「いつかは……お別れしないといけないんだよね…」 例え怖がらせなくても、隣で笑ってくれていても。 "死"という終わりが必ずやってくる。 「だから夢叶……早く起きて…」 ――ぼくたちの時間が少しでも長くあるように。 ――このまま君の命が終わってしまわないように。 ((眠り姫を想う)) == == == == == == == == == == ♪〜 ♪〜〜 ♪ 「ありゃ?それって夢叶のケータイじゃない?」 「うん。……あ、またお兄さんから」 「なんでウーさんがまだ持ってんの?」 「だってここで壊すとGPS?ってのでバレるでしょ」 「なんならこのイトリ様がそれの始末任されてあげるけど?」 「イトリさん勝手にデータとか盗み見そうだしなぁ…」 | → |