01 == == == == == 私は昔、本当の家族を亡くした。 でも私はその家族のことをほとんど憶えていない。 顔も、名前も。 薄情な娘だと思うだろう。 言い訳にしかならないが、ある時期より以前の記憶が曖昧だ。 唯一憶えていることがある。 母が私に言ったこと。 ――1人で生きていける子になりなさい。 昔も今もその真意は分からない。 自立を求めているのだろうか。 それとも誰にも頼るなと言っているのだろうか。 最早、その真意を問いただすことはできない。 問いただすべき相手がいない。 私は孤児院にいた。 神父様は、私の両親は亡くなったのだと言った。 迎えが来なくて捨てられたと流した涙が止まった。 私にとって孤児院での生活は2度目の人生、2番目の家族。 でも、その幸せは長くは続かなかった。 CCGに保護されたが、私はアカデミーに入らなかった。 そして私は3度目の人生を選んだ。 3番目の家族、私の兄となった人は喰種捜査官だった。 私は、今度こそこの幸せが長く続くように願っている。 ――1人でも生きていける子になりなさい。 私は幸せになるべきではないのかもしれない。 幸せを望んではいけないのかもしれない。 それでも、私は手を大切な人を求めて伸ばしてしまう。 私は欲張りだ。 大切な人も、大好きな人も手放せない。 ((そして、今度は何を失うだろう…?)) == == == == == == == == == == 『――…丈だ』 『ぁ、……夢叶、です…』 『空き部屋がある。そこを使ってくれ』 『ありがとうございます……』 『何かあれば連絡しろ。あと、その口調はやめろ』 「今思えば、よくもまぁ簡単に受け入れてくれたな〜」 「一人暮らしの家に女が来るって言うのにフツーだし」 「そもそも、"その口調やめろ"って言われても顔怖かったし」 | → |