01 == == == == == 「あれ、夢叶って十字架なんか持ってたんだ」 読んでいた本にしおりをはさみ、他人の鞄を勝手に漁って十字架を引っ張り出しているウタの方に近付いた。 「なに勝手に漁ってるの?」 取り返したと思えば、他の物も取られていることに気付いた。 「私の携帯に何か用?」 「ん〜……最近誰かにご執心みたいだから」 そう言って勝手に操作し、送受信の履歴やアドレス帳を見ている。 「……なんか手馴れてない?」 「うん、毎月チェックしてるから。 気付かなかった?」 思わぬ返答に頬が引き攣った。 「ま、毎月…?」 「トイレに行ってる間とか、お風呂に入ってる時とか。 夢叶ってたまに忘れて帰ったりしてるから」 言われてみればウタの家に忘れて帰ったことが多々あった。 普段から肌身離さず持ち歩いているわけではない。 無くてもいいや、と気にしていないから繰り返していたようだ。 「ところで夢叶ってクリスチャンだったの?」 ウタは十字架を指さしている。 「私だって……」 「ん?」 夢叶は無意識に十字架を握りしめていた。 「……昔は信じてる神様がいたってだけ」 ((何から救われたかったのかな…)) == == == == == == == == == == 「ウタは信じなさそうだね、神様とか」 「まぁ実際役に立つわけじゃないからね」 「現実的だね」 「でも、夢叶は信じてるよ?」 「私は神様じゃないけどね」 「ボクにとっては女神さまかな」 「……ウタって意外とロマンチスト?」 | → |