01 == == == == == 「何でジュースなの……」 オレンジ色の液体が注がれたグラスを不満げに揺らす。 「アンタに酒飲ませたらアタシがウーさんに文句言われるんだから、ジュースで我慢なさい」 イトリは血酒を楽しんでいる。 「2倍出すよ…?」 「ダメダメ。 これは営業とは別問題」 これは無理だと諦めてジュースを飲む。 「で、ウーさんとはどうなんだい?」 「どうって……普通だけど…」 血酒のボトルの表記を見ていた夢叶。 イトリがにんまりと楽しげに笑うのを見逃していた。 「ほほぅ……仲は良好かね」 「いや、言ってないから。 あとそのにやけ顔やめてよ…」 その後、蓮示の愚痴を聞いてもらったりした。 気付いた時には夜も深い時間。 今日も帰る場所はウタの店なので、遅くなるようなら連絡するようにと言われていた。 慌ててメールを送った。 「イトリ、私帰るから!」 「えー、もう帰っちゃうんだ…。 あぁ……ウーさんと"仲良し"しなきゃいけないからね」 空いたボトルで殴ってやろうかと思ってしまった。 流石に店で暴れるのも大人げなくて止めた。 「おかえり、夢叶。 遅かったね………」 営業時間を終えた店だが、明かりはついていた。 夢叶を出迎えたウタは、作業もせずに座っていた。 「た…ただいま……」 機嫌を伺いながら入る。 いつもなら出迎えのハグをしにくるのに、座ったままだ。 「遅くなるようなら連絡してって言ったよね……? いま何時か分かる…?」 時計を確認すれば、既に短針は右に傾いていた。 「1時30分………かな…」 「ぼくがどれだけ心配したと思う……?」 その後何度謝っても、ウタはにこりともしなかった。 「夢叶は……ぼくといるより、イトリさんといる方がいいの…?もうぼくに飽きちゃった……?」 どこにいたかなんて言っていないのに……。 血酒の匂いでも嗅ぎ当てたのだろうか。 「そんなこと……」 「じゃあ……あんまりぼくから離れたらダメだよ……」 手招きされて傍に寄れば、強く抱き締められた。 ((これは好きだからじゃない、大切だから)) == == == == == == == == == == 「…今日は一緒に寝よ」 「え、それはちょっと………」 「………ぼくのこと嫌い…?」 「好きだよ……!」 「なら問題ないでしょ…?」 「だけど、……このまま寝たら、私の肋骨折れると思うんだよね…」 「………力緩めても逃げない…?」 「逃げない!逃げない!」 ← | → |