01 == == == == == 部屋に入ってきたウタは動きを止めた。 「夢叶は……モノ作りとか、創作活動が好きなの…?」 床に座って忙しなく鉛筆を動かしている。 「好き、と言うより……思い付いたら描いておきたいし…」 そう言っている最中でさえ手を止めない。 ウタが置いていたスケッチブックは夢叶の絵で埋まっていく。 「じゃないと忘れちゃう…?」 「そう、忘れちゃうから」 漸く描き終えたのか、鉛筆を置く。 「見せて…」 「あ、うん」 スケッチブックをペラペラと捲っていく手があるページで止まった。 「マスクのデザイン……」 白と黒だけで表現されたそれ。 だがそれだけでも、十分な作品になる気がした。 「ウタのマスク見てたら思い浮かんだから…」 そこから数ページ続いているマスクのデザイン画。 「……なるほどね…」 スケッチブックを夢叶に返す。 「作ってみる?…マスク」 「え?あ、でも作ったこと…」 ない、と言おうとした夢叶の手を取る。 そしてマスクを作る時に使っている作業台に連れて行く。 「座って。…ぼくが教えてあげる」 先程のデザイン画が気に入ったのか、次々道具を出してくる。 顔型がどうこう、継ぎ目がどうこう…。 モノ作りへの予想外のこだわり。 夢叶は一生懸命聞いてみたが理解までの道は長そうだ。 憶えている限りの作業で何となく作ってみる。 「……絵は繊細なのに、実際作るとなると大雑把なんだね…」 正直な感想を言われ、作りかけのマスクを置く。 「でも絵で終わらせるには勿体ないな……」 スケッチブックのデザイン画をまじまじと眺める。 「……夢叶、このデザインでぼくが作ってもいい?」 「ん?これで良かったらいくらでも使って」 席を代わるとてきぱきとマスクを作っていくウタ。 夢叶はそれを目を輝かせながら見ている。 暫くすると絵の通りの面影が見え始めた。 ウタは手を止めると立ち上がった。 「お腹空いてきたし、ご飯にしようか…」 そう言って肩を抱かれ、先日のウタの言葉を思い出す。 「(私、とうとう喰べられるんだ…)」 「……いい感じに緊張してるね」 頭上から聞こえた笑い声に顔を上げた。 「夢叶のお陰で久しぶりにいいマスクが作れそう…。 ………もう暫く、夢叶の絵でマスクを作ってたい…」 ((欠けていたものが満たされる充足感)) == == == == == == == == == == 「今度タトゥーのデザイン画描いてよ…」 「え……私、タトゥーは彫るつもりないし……」 「だから、夢叶じゃなくてぼくが彫るの」 「そっか、分かった。考えとく」 | → |