根底を揺るがすもの == == == == == あー…………頭がくらくらする…。 手がとても熱い。 心が冷めていくのが分かる。 君の声が…聞こえない。 「苦しい……?叶華」 ぼくは倒れる叶華を見下ろした。 短く途切れ途切れの息を吐き出してる。 今すぐ楽にしてあげたら、恨まれずに済むのかな…。 あぁ、でも無理か。 その細い胴体に穴を開けたのはぼく。 「ぁ、……、…………、…っ……………」 溢れ出た血に手が疼いてる。 どうしてかな……? その体を好きなように引き裂いて血を見たいから? それとも、傷口に押し当てて、出血を止めたいから? たぶん、……どっちも。 ぼくの愛情は破壊衝動も一緒についてくる。 それでも、今まで本当に殺そうとしたことはなかった。 一時の悦楽に身を委ねるには大きすぎる喪失感。 本当に好きだし、一緒に居たいとも思う。 それでも、ぼくは叶華を殺さなきゃいけない。 君には人を変えてしまうほどの影響力があったから。 ぼくの根底を揺るがさせるわけにはいかないから。 あぁ………もう焦点が合わなくなってきた。 今の叶華は何を見ているんだろう。 ぼくは見えているのかな? もし見えているなら、どんな風に見えているのかな? この世界を、喰種を憎いと思うのかな? 「ダメだよ叶華………ぼくを見て」 いつもより冷たい頬を両手で挟む。 ぼく以外が映らないように顔を近付ける。 それでも、叶華がぼくを見ている確証はなくて…。 「ねぇ叶華、ぼくのこと好きだった?」 ぼくが喰種でも? 君たち人間を喰らうバケモノでも? ねぇ、答えてよ……。 どんな答えでも怒らないから。 「ぼくは……好きだよ、叶華のこと」 そう、好き。 今でも、好きだよ。 すぐにでも助けてあげたいくらい。 助けて、とぼくを求めてほしい。 ((ぼくの全てを塗り替えて)) == == == == == == == == == == 「あらァ、今日はあのかわいこちゃんいないの?」 「んー………ケジメつけるんだってさ、ウーさん…」 「まァ……別にいいと思うんだけどねぇ、アタシは」 「みんなそーだっての。あれでウーさん、変なトコ潔癖だから」 「そうねぇ………でも、寂しくなるわね」 「好きなことやって好きなコと居るくらい欲張りでもいいのにさ……」 「叶華ちゃん選んだら変わっちゃうって分かってたのよ……きっと」 | → |