恩師がため == == == == == 什造は病院の廊下を歩いていた。 看護師や患者がチラチラとこちらを不躾に見てくるが、そんな視線は一切気にしていないようだ。 613と書かれた病室の前で立ち止まる。 「……、」 意を決してドアを開けた。 「ん?―――あぁ、什造くんか。 漸く元上司のお見舞いに来てくれる気になったんだ」 個室のベッド、叶華がいた。 「……」 何も言わない什造に首を傾げる。 「…違ったかな?什造くんだと思ったんだけど…」 「僕です…」 落ち込んだような声に入ってくるように勧める。 「何か、あったみたいだね」 「…叶華は妖怪みたいで怖いです……」 叶華は一瞬考えた。 「篠原特等に引き継いで頂いたのは正解だったみただね……でも、悲しい思いもさせてしまったようだ…」 什造を手招きし、頭を撫でてあげる。 「……叶華、僕やっと分かりました」 撫でる手を掴み、両手で握った。 「――僕、篠原さんも叶華も大事です」 叶華は少し驚いた。 「今までお見舞い来なくてごめんなさいです…」 「……いいよ、今日来てくれたから」 叶華は什造の上司だったが、戦闘での負傷で長く入院していた。 篠原に引き継いでもらった後も什造は1度たりとも訪れなかった。 だが篠原との仕事を通じて、何かが変わったのだろう。 それだけで、叶華は嬉しかった。 「叶華、お願いがあるです」 「?」 「僕、叶華や篠原さんの代わりに頑張るです」 ((……どうしたら特等になれるです?)) == == == == == == == == == == 「元上司に向かって妖怪とは失礼な」 「だって叶華、妖怪みたいです」 「え、そんなに怖い?怒ったこと1回しかないでしょ」 「叶華は怒らないから逆に怖いです。 それに人が考えてることすぐ当てるから怖いです」 「あはは……それは什造くんが分かりやすいから」 | → |