財閥令嬢 == == == == == 人間を競売にかける喰種独自のオークション。 今はそれも終わり、会食の時間となっている。 叶華はホールの端、舞台袖に隠れるように佇んでいた。 「おや、叶華嬢」 それを目敏く見つけて近付いてくるのはオークショニアの男。 「お食事がお口に合いませんでしたか?」 ゼブラ柄の奇抜なスーツに不思議なマスク。 自らを"ピエロ"と呼ぶ彼らは例の喰種集団の一員かもしれない。 「……食事をしに来たわけではないの」 本来、此処に集まった喰種の目的は1つ。 「本日もお眼鏡にかなう品が無かったようで…」 そう、オークションだ。 出品される人間で、気に入った者を競り落とす。 男が言うように、今日も収穫はゼロだ。 競り負けたのではなく、欲しい者すらいなかった。 「最近は足をお運び頂いておられるのに、申し訳ございません」 「……いえ、貴方がたではなく私の好みの問題ですから」 しかし、目当てのものが手に入らないのでため息出る。 「何分、叶華嬢のお好みの存じ上げないものでして…」 「そうねぇ…………貴方なら競り落とす気にもなるわ」 喰種である彼を例えに持ち出すのは誤りだが、男は動じることなく、大袈裟に喜んで見せた。 「叶華嬢にそう仰って頂けるとは、光栄です」 軽く頭を下げる男。 「私も、叶華嬢でしたら競り落としたいものです」 敬うような態度を取りながら、腰に手を回してくる。 冗談ですがね、ときっぱり手を離すが、彼らピエロはためにこういったジョークを挟んでくる。 そして意外と客受けはいいのだ。 「あら、面白い冗談ね。 競り落としてどうするの?」 「そうですねぇ、どういたしましょうか…」 叶華に倣い男も誘うように言う。 「叶華嬢でしたら、どうしてくださるのです?」 「そうねぇ、取り敢えず私の家にご招待しようかしら」 「競り落とさずとも、今宵の私は叶華嬢にお貸ししますよ」 ((貸与品)) == == == == == == == == == == 「貴方たちのジョークは面白いわ」 「私たちはピエロですので」 「流石ね、貴方の素の顔が全然分からないわ」 「マスクをつけておりますから」 「隠すのがお上手ね」 「叶華嬢の本当のお顔も、想像できませんよ」 「あら、私はあまり顔を隠さないマスクなのだけど」 「えぇ。ですかそれは本当のお顔ではないのでしょう」 「オークショニアは随分"目が良い"のね」 | → |