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忍び寄るゼツボウ
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「待ってたよ、哀れな仔羊くんたち」




出口に立ちはだかる1人の男。

フードを被っていない顔。
優とミカは見覚えがあった。

吸血鬼……それも貴族の。

みんな動けず、声も出せない。


あと少し、あと少しなのに。


一番呆然としているのはミカだった。
いや、一番状況を理解していた、とも言える。

少なくとも、ルカは状況を呑み込めずにいた。





「そう、その顔♪

希望が突然消え去る時の人間の顔。
だからこの遊びはやめられないんだよね〜〜」





「遊びって…」

ミカと優が目を見開く。

「まさか……罠…」
「そんなっ」

状況を理解したルカは狼狽える。

手を繋いでいた子供たちが服にしがみ付いて来る。


その時、優とミカの間に風が吹いた。
地下であるここでは無縁のもの。

トン

微かな足音に振り返れば、残酷な光景があった。

「、ぃゃ…」

大切な家族が吸血される姿にルカは思わず声が出た。




「あれー。
一気に吸ったらもう死んじゃった」




フェリドは抱えていた子供を落とした。

体を打ち付けても動かない。
血色の悪くなったそれは言葉通り死んでいた。


「くっ…そおおおおおおお!!!!」


激昂した優が銃を取り出し構える。

それを横目に捉えるフェリド。

パンッ

乾いた音。
優にはフェリドが弾丸を避けたことしか分からない。

だが、フェリドには弾丸の回転まではっきりと見えていた。

「弾を……よけた…?」

「だめだ優ちゃん!この距離じゃあのバケモノに当たらない!」

慌てて駆け寄るミカ。

「あれぇそれ僕の銃じゃない。
地図だけじゃなく銃も盗ったのかぁ」

武器を盗られたと知っても、余裕を崩さない。

「あははいいねぇ君ら。
まだ抵抗できる元気があるんだ」

此処にいる子供のほとんどが抵抗という選択肢すら持たない。

じゃあもう1つ希望をあげよう、とフェリドは言う。



「実はその地図、本物なんだ」



つまり、優たちの目指した道の先は外。
そしてそれは今、彼らの後ろにある。

「外に出られたら僕はそう簡単には追えない」

そんな大チャンスを教えて尚、楽し気に笑っている。





「その希望と絶望のはざまで、………君らはどんな声で鳴くのかなぁ?」



((残された2つの道))
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「酷いなミカ君。
血を吸わせて銃を盗ってくなんて」
「……」
「あれぇ?ダンマリ?
その子も連れて来てたらもっと武器が手に入ったかもしれないのにね」
「(そんなこと、誰がっ)」


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