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芳しきチ
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開け放たれた扉。

ノックをして入室の許可を貰うのが癪なので好都合。



「……何の用だ」




ーーーフェリド・バートリー。

椅子に座る彼の膝には華奢な少女。
その首筋に顔を埋めていたフェリドが顔を上げた。




「やあミカ君♪」

顔を見せぬようにフードを被せられる少女。

ルカを思い出させる髪の色をしていた。

「(また血を吸っているのか……)」
「そんなに怖い顔しないで下さいよ」

最近、見る度にこの少女を連れているフェリド。

顔を見たことはないが、きっと同じ少女だ。


「(血の匂いが濃い……)用件を言え……」

「せっかちだなぁ〜」

ミカが血の香りに耐えているのを楽しんでいる。
フェリドは自分の胸に倒れかかっている少女の頭を撫でる。

「クルルが神戸の三宮に行ってほしいそうですよ」

ラクスやレーネたちと一緒に、と付け加える。

「あぁそれと……」

少女の手首を晒す。
そこにはいくつもの吸血痕。





「吸っていくかい?」





ゴクリ

濃い香りに吸血衝動が収まらない。


「喉が渇くでしょ?
吸血鬼の飢えは耐えられるものじゃない」

ミカは目を瞑る。

思い浮かべるのは優やルカの顔。

「っ、……いらない」

「ならクルルにちゃんと血を貰っておいて下さい」


するとフェリドは少女の手首の皮膚を突き破る。
部屋に芳しい血の香りが広がる。

「っ、」

ミカは早足で部屋を出た。

あそこにいると、どうにかなってしまいそうだった。




((吸血鬼を惑わせ破滅に導く))
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「あ〜らら、行っちゃいましたねぇ」
「…放して、フェリド・バートリー」
「あは、今日はちゃんと覚えてる方みたい♪」
「…?……ミカ…」
「放さないよー、ルカちゃんは此処で待機」


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