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仕方のないドーピング
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4年前



「ねね、優ちゃん、ルカ」

「なに?ミカ」
「いま本に忙しい」

珍しく優の方が本を真剣に読んでいる。

「ねねねね、優ちゃん」

「うるさいねぇ、何だよミカ」

ミカは寝転がったまま2人に聞いた。




「もしこのさ、吸血鬼の都市から逃げることができたら優ちゃんとルカは何がしたい?」




優は本から顔を上げてはぁ?と言う。

「なに馬鹿いってんのお前」

「優くん口悪い」

うるせぇ、と一蹴される。

「外はウイルスで人類滅亡してんだぞ?
出られるわけが…」

「もしもだよ、もしも」

ミカが何を考えているのか分からなかった。




「もし僕ら百夜孤児院の家族だけで外に逃げ出せたら、吸血鬼がいない世界に行けたら、……楽しいと思わない?」




あまりにニコニコ笑顔で言われるから考えてしまう。

もしも外に出られたら、と。

「俺らだけで?」

「うん、家族だけで」

「そりゃ…楽しそうだなぁとは思うけど。
なぁ、ルカ」

「そうだね、とっても楽しそう!」

何より、大切な家族に不自由な暮らしを強いらなくて済む。

「ほんと?」

ミカは幸せそうに笑った。



「じゃあちょっと頑張ろうかな〜」


「あ?」
「ミカ?」

「ううん、何でもなーい」










ーーでも、そうはならなかった。



「(あれから4年……。

でもミカ、ルカ、外も楽園じゃなかったよ。ここもお前らを殺した吸血鬼どもがうんざりするほど溢れ返っている)」








「突然ですが、今から優さんの第1回目の修業を始めまーす♪」


敵を倒しながら進んでいた優たち。

だが埒があかないということで先に進むことに。

そして時間が惜しいので移動しながら説明する。

「すでにさっきの吸血鬼の貴族とぶつかってわかったと思いますが、いくら優さんが"鬼呪装備"の中でも最上位、"黒鬼"シリーズの保有者とはいえ、今のままだと瞬殺です」

前線に出てもまるで役に立たない。

「もうねあれです。
地面に落ちてるうんこ以下の存在…」

「なんの話だよ!!」

こんな状況でもユーモアを忘れないシノア。



「冗談言ってる余裕ねぇだろ。

で…一体何すりゃいい?
吸血鬼を殺せんなら俺はなんでもするぞ?」



「やるのは簡単、これです」

シノアは懐から小さなケースを取り出した。

「……薬?」

「えぇ、今1番の最先端の修業方です」

何かと思えば"ドーピング"だった。

飲むと鬼と同化しやすくなるらしい。
だが、本来の力が引き出せる。





「理論上、一錠飲めば1.5倍、二錠飲めば1.8倍の力が使えます。ただーーー三錠で内臓すべてが破裂しますが」





二錠でもショック死しかねないダメージがある。

だからふつうは一錠まで。

「おまけに効果時間は15分」

薬が切れた瞬間、鬼呪装備すら解除されて完全に無防備な状態になる。そこで登場するのがアラーム。

「押すと13分でアラームが鳴ります」

残り2分でただの人間になる。

だから全力で逃げろ、だそうだ。

「…さっき貴族とぶつかったとき、なぜそれを渡さなかった?あん時これ飲んでりゃー」

「勝てませんでしたよ」

はっきりと言われてしまう。

「薬の効果が出始めるのに10秒かかります」

そして10秒あれば…。





「彼は私たちを皆殺しにできた」




((か弱い人間が吸血鬼に勝つために))
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「薬飲んで強くなるとかなんか嫌だなぁ…」
「ああそこは安心してください」
『??』
「この薬、人体に副作用がありまくるのは日本帝鬼軍お墨付きですから」
『全然だめじゃねぇか!!!』
「あはは、だから極力飲みたくないんですが〜」


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