×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

罰を求めて
== == == == ==



人は誰しも生きるための熱を持っている。









「入るよ悠」

ノックに返答がないため、仕方なく一言断りを入れて扉を開ける。



部屋は暗く、切り裂かれたカーテンから差し込む光でなんとか部屋の惨状が見てとれた。

様々な物が投げ散らかされ、ひっくり返されて割れている。


そして部屋の隅から聞こえる嗚咽。



光の届かないそちらに進んでいく。
散らばっていたらしい破片がパキリパキリと割れる。

感じる気配の前に屈む。

次第に目が慣れてくる。





この部屋を与えている少女が膝を抱えて泣いていた。





「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめん、なさい」


そう言って手に持った壺の破片を腕に押し付ける。

「もう止めなさい悠」

細い腕を捕まえ、破片を取り払う。

「どうして君たちはそう自罰的なのだろうね」

少女を抱き上げ、縮こまった背中を優しく撫でる。


扉の方に歩いていけば、傷だらけの肌が露になる。

至るところに生々しい裂傷があり、血の流れた痕や服の染みとなっている。






「っ、ぃや…!
血っ……いやっ、怖い……!ごめんなさいっ」






自らの腕や手の平の赤を見て取り乱す。

「悠、落ち着きなさい。
……悠」

暴れようとする悠の頭を自身に軽く押し付ける。

「怖いなら目を瞑っていない」

荒い息を吐いている背をさする。


「大丈夫、誰も死んだりしないよ。
……君が大人しく手当てされてくれればね」



そして彼女は、祖国を侵略した国の皇子の懐で意識を失った。















「また例の、ですか?」




自身の服を見て眉をひそめる副官。
先程送り届けた悠の血が染み付いていた。

「あぁ」

すぐに新しい服が用意される。


「彼女は優しすぎるんだよ」


何事かとこちらを見上げるカノン。

「幼くして父君の死を目の当たりにしたとは言え、自分を守るために人を殺したことに感じる罪悪感が強すぎる」

「……それで殿下はどうなさりたいのですか?」

悠を保護して8年、何もせずただ見守っていた。

それなのに、変化が訪れた。





悠の兄、枢木スザクがシュナイゼル直轄の特派所属となった。ランスロットのデバイサーとして。





「今は何も。
記憶を弄ってあげられたら楽なんだろうが、特定の記憶を改竄することはできないし、負担が大きいからね」

その技術があれば、迷うことなく施す。

そんな確信が長年仕えるカノンにはあった。

部屋を出て、悠が眠る病室に入る。


「……面白いと思わないかい?」

「面白い、ですか?」

傷だらけの腕には点滴の針が刺され、青白い顔で眠る少女。










「死に場所を求めるように戦う兄と、血を恐れながらも自らを罰し続ける妹。

彼らは生きるためにあるべき熱を、死ぬことに向けている。

その矛盾がとても興味深い」






== == == == == == == == == ==
「血液恐怖症なのに自傷行為ですか…」
「変わった子だろう?」
「ええ本当に」


|


TOP