Do not worry



「まじむかつくわ、ありえへん」
「どないしてん」
「あ、聞いて白石!」


ある日の昼下がり。あたしはとても穏やかとは言えない時間を過ごしていた。


「千歳と喧嘩でもしたんか?」
「いや喧嘩っちゅーかなんちゅーか」
「ん?」
「あたしのことほんまに好きなんやろか、って思ってまうことが時々あって…」


白石にこのイライラの原因を伝えてみると、驚いたようで白石は少し目を見開いた。


「なんや、なまえはそんなことで悩んどるん?」
「そんなことやない、あたしにはめっちゃ重要なことや」
「あーすまんすまん、言い方悪かったな」


ったく、白石やなかったらど突いとったわ。


「なんでそう思うん?」
「全然デートもしてくれへんし、連絡もくれん」
「あぁ、なんか想像通りやな」
「いっつもあたしから一方的に連絡しとる感じや。しゃあなしに付き合われとるみたいで嫌や」
「それちゃんと千歳に言うたんか?」
「い、言っとらん…」


やっぱりな、と白石に図星を指された。あたしも彼が理由で機嫌悪いくせに、本人に直接言えないっていうのもなんかあれやけど。


「あいつには直接言わなアカンで。びびっとってもしゃあないやろ」
「わかっとるけど…」
「俺が言ってやってもええけど、なまえが言わな意味ないやろうしなぁ」
「…わかった、じゃあ今から言いに行くから着いてきて」
「急やな!てかなんで着いていかなアカンねん!」
「側におらんでええから!影からこっそり見守っててや!」
「ストーカーみたいやないか!」
「ええから着て!」


嫌がる白石の腕を強引に引き、千里がいるであろう場所へ向かう。昼休みは決まって、テニス部の部室で昼寝しとるから。なんで千里が部室の鍵持っとるかは謎やけど。


「あ、おったおった」
「寝とるやん」
「白石はダンボールの裏にでも隠れとって!」
「ほんま嫌やねんけど…、俺自分らのイチャイチャしとる姿見たないで…」
「イチャイチャなんかせんから大丈夫!千里起こすから早よ隠れて!」
「はいはい」


白石をテニスボールなどが入ってるダンボールの山の裏側へ行かせて、千里を起こしに側へ寄る。人の気も知らんで気持ちよさそうに寝よって!腹立つ!


「千里!なまえやで!起きて!」
「…ん、なまえ…?どげんしたと?」
「ちょっと聞きたいことあるんやけど」
「なんね?」
「あ、あのさー」


覚悟を決めたのに、顔を見たら言いにくくなってきた。だってしゃあなしに付き合われとったらどうしようとか、嫌な考えしか頭に浮かばん。もやもやする。もう出てきてええから白石助けてー!!


「なまえ、泣きそうな顔しよる」
「え?」


自分でも気づかないうちにそんな表情してたのか。すると千里があたしを軽く抱きしめて頭を撫でてくれた。その行為が優しくて愛しくて、ますます聞きにくくなる。


「なまえ、どげんしたと?」
「…千里は、あたしとどんな気持ちで付き合うてるん?」
「え?」
「デートもあたしから誘わんとしてくれんし、連絡かてあたしが一方的にしとる感じやんか。ほんまはしゃあなしに付き合うてくれとるんちゃうんかなって心配になるねん」
「なまえ」


いきなり名前を呼ばれたかと思ったら、顎を掴まれキスされた。あたしも単純やな。こないなことされたら、怒れるもんも怒れんやん。先程までの心配やイライラがどっか吹っ飛んでったわ。


「たしかに連絡とかなかなかせんのは俺が悪いばい。でもデートどう誘ってええかわからんとよ…」
「え…」


あたしはその理由に驚いた。まさか千里がそんなことを思っとったとは。デートのお誘いができなくてやきもきしてたんか?


そして少し顔を赤らめ、口元を腕で隠す仕草をかわええと思ってしまって、あたしは自分でもわかるくらいニヤつきながら千里をじっと見つめた。


「に、ニヤニヤしすぎばい!」
「だーって千里めっちゃかわええ」


千里の照れる姿なんてめっちゃ貴重やない?こういう姿もあたししか見れないんちゃうか?先程までのネガティヴな自分はどこ行ったんや。


「…ったくなまえ、おまんには仕置きが必要ばい」
「仕置きってなんや…、うわっ!」
「もうちぃと色気のある声出さんね」
「せ、せやかていきなりやったし…、てかどういう状況…?」


気づけば千里があたしを都合良くその場にあったマットの上に押し倒しとった。


「だけん、仕置きばい」
「は?」
「なまえがどこまで耐えられるか試しとうなった、覚悟せんね」
「昼休み終わってまうで」
「ちぃと黙りなっせ」
「千里もね」


こうなったら止められん。もういらん心配はせん。さっきまでの弱腰やったあたしはどこへ行ったのやら、自ら誘うように千里に口付けた。


てゆうか、なんか忘れとる気ぃする…。




Do not worry
(不安にさせてごめん、好いとうよ)
(あたしはこんなにも彼に愛されとったんやね)
(最悪や、出るに出れんやん、とりあえず耳塞いどこ)



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