1周年企画 | ナノ





高校一年の春、入学式の日。あたしは入学式に参加せず、保健室に来た。理由は入学式に出たくないだけ。渋々学校まで来たのに、初日から早々、生徒指導らしき人と揉めて、さらにやる気を失くしたわけ。保健室の先生も入学式に参加しているだろうから暫くは戻ってこないだろうし、とりあえずここでサボろうと思った。ベッドにドカっと腰を下ろしたと同時くらいに、保健室の扉が開いた音が聞こえた。具合悪い奴でも来たか?と思ったけど、入ってきたのは柄の悪そうな男。ピアスを付けてて制服も着崩してる。あたしと同類か?
「あ、先客」
せっかく一人でサボれると思ったのに、その男はあたしが座ってる隣のベッドに腰を下ろす。最悪、三台もあるのだから、せめてもう一つ奥に行ってほしいんだけど。そんなあたしの願いも叶わず、その男は気安く話しかけてくる。
「朝、生徒指導の教師と喧嘩しとった子?」
「そうだけど」
「教師に足壁ドンしちょる、気強そうなむぞらしか子おるなー、って遠くから見とったと」
なんだこいつ、ずっと見てたの?てゆうか、むぞらしかってなに。
「一目惚れしたと」
「は…」
いやいやいや、落ち着け自分、きゅん、じゃないだろ。こいつも顔近いし。入学式の日に出会って恋に落ちました、なんて少女漫画じゃないんだから。てゆうかぐいぐい近づかないで、冷静装ってるのがばれる。
「そんじゃ、俺は帰るたい。同じクラスだとよかね」
そう言ってベッドから立ち上がり、手をひらひらさせながら保健室を出て行った。しんとする部屋の中、なんだか居た堪れなくなって、ガバッと布団にしがみ付いた。あいつと同じクラスだといいな…。もう恋は始まってると、そう気が付いた。



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