バスタイムはゆっくりしたい
朝、体に重みを感じ目覚めると、謙也があたしに絡み付くように寝ていた。…重っ。
あの後、あたしは爆睡をかましてしもうたけど、お兄ちゃんと謙也はどんな話ししたんやろか。気になるけど逃げ出した手前、聞くに聞けないような、なんやろ、もどかしい感じする。
謙也はアホみたいな顔しながら気持ち良さそうに寝とる。なんやキュンとして、思わず謙也を抱き締める。このアホみたいな寝顔もかっこええし、なにより愛おしいわ。完全にフィルターかかっとるな。
「ん、なまえ…」
「ごめん、起こしたね」
「…なんでなまえの胸元びっしょりなん?そんな暑くないやろ」
「あんたの涎や」
堪忍なぁ、なんてこれまたアホ面で謝ってくる。まぁかわええし許すけど。
「んー、なまえー」
「どしたん、めっちゃ甘えんぼさんやん」
あたしの首元に顔を埋めてくんくん匂いを嗅いどる。かわええ…、けど側から見たら気色悪いな。寝起きの匂いなんで嗅がんといてや。
「あ、そうや、白石が俺らのこと認めてくれるって」
首元から顔を離したと思ったら、唐突にお兄ちゃんの話しをした。てゆうか、え?認めてくれんの?
「すごい謙也…、どうやってお兄ちゃんを丸め込んだん?」
「丸め込んだ訳やないで、白石に俺らの本気が伝わったんやろ」
してやったりな表情で、得意気に言う謙也。昨日、兄妹喧嘩までしといてあれやけど、よう認めてくれたなお兄ちゃん…。
「ただ、条件付きやねん」
「条件?なんの?」
「俺と付き合うんはええけど、お兄ちゃんとのバスタイムは今まで通りやで、って」
「…」
訳のわからんことを…。前に恥ずかしいからあんま言わんといてって言ったやろ…、これからはさりげなく回数減らしたろ。
「まぁとにかくや!これで堂々とできるな!」
満面の笑みであたしの手を取り喜ぶ謙也。か、かっこいい…!眩しい笑顔とはこのことやな!この謙也の格好良さに免じて、今までのお兄ちゃんの変な行動とかちゃらにしたろうかな。今日は家に帰って、久しぶりにお兄ちゃんとゆっくりバスタイム満喫したろ。