天使降臨


「ほんま天使や…」


子供が産まれてから早いことに三ヶ月が経った。父親になった蔵ノ介は親バカまっしぐら!口開けば子供の話しばかり。あたしが蔵ノ介にあまえたくても、ずーっと抱っこしてたりチュッチュしとったりで、あたしが入る隙がない。あれ?子供が産まれても変わらないって言ってたのは誰やった?


「むすこ〜、ほんまかわええなぁ〜、食べちゃいたいくらいかわええわ〜、カプッ」


なにがカプッ、だ。ほっぺを唇で挟まれて、めっちゃ真顔になっとる息子。うっといやろな…。


「ねぇ蔵ノ介、むすこめっちゃ嫌そうやで」
「どこがや!むすこくんはパパのチュー大好きやんなあ?うんだいすき〜。ほらな」
「自分で言うたらアカン」


声色を高く変えて、息子の代弁をする蔵ノ介。代弁といっても絶対に息子はそう思っとらん。だって今にでも泣きそうな顔しとるし!


「ふぇ…」
「わー!どないしてんむすこくん!泣くほどパパが好きなんか!?」
「ちゃうで。ええからどいて、授乳タイムや」
「…俺も?」
「ど突いたろか」


なんや些かアホになったんやろか…?旦那が嫁の母乳を飲んだという話しを聞いたことがあるけど、不味いとしか聞かへんし絶対飲まんって言ってんに!いや、美味しくても飲ませへんけどな。


「ほんま美味しそうにに飲むよなぁ」
「あかちゃんにとって母乳とミルクはご馳走やろ」
「不味い聞くけどほんまはうまいんとちゃうか?少し飲ませてや」
「無理」
「ちょっと」
「しつこい」
「はい」


しつこいパパは放置して、あたしは息子に目を向ける。ほんま美味しそうに飲むし、なによりこの姿を見よるとより一層愛おしく感じる。ママになったんやと実感する瞬間。


「なまえ、今めっちゃ優しい顔しとるで。母親って感じや」
「当たり前やん、この子のママはあたしだけやもん」
「せやな。あー、ほんま幸せやなぁ」


そう言いながら蔵ノ介がソファで座りながら授乳をしてるあたしの隣に座り、肩にもたれ掛かってくる。髪の毛が少し顔にかかってむず痒いけど。でも蔵ノ介があまえてくれるのはめっちゃ心地ええ。


「てかさ、いつ頃になったらできるん?」


出た。最近の蔵ノ介は、もう我慢の限界なのか、夜の営みはいつ頃できるかをよう聞いてくる。


「あぁ…、もうちょい待って。まだあたしに勇気が出んわ」
「でももう痛ないんやろ?」
「うん、痛ないけどなんか怖いねん」
「そろそろ限界なんやけど…」
「もう少し待っててや。大丈夫や思うたらあたしから誘ったるから」
「ほんま?約束やで?」
「任しとき」


こういうのはタイミングが必要やと思う。抜糸ももう済んどって、医者にももうしても平気と言われとるけど、やっぱ切ったあとにする勇気がなかなか出えへん。裂けたらどないしよとか、いらん考えしか浮かばんくて…。蔵ノ介には悪いけど、そういうことはもう少し我慢してもらおう。


「ごめんね」
「ええねん、なまえから誘われるんも有りやなって思ったし。久々やからめっちゃすごいことしてくれそうやん!」
「変態おやじ」
「お、おやじちゃうわ!」
「あたし成人式まだやもん。蔵ノ介は着々と三十路に近づいてるやん」
「うっさい!そんなおっさんに惚れたんは誰や!」
「蔵ノ介があたしに惚れたんやろ!」
「そ、その通りやけど最終的になまえも俺に惚れたやん!」
「惚れてやったんや!」
「わー、強気やな!後で覚えとき!」
「無理わすれる」
「あーあ、ほんまむすこくんのママは素直やないでちゅね〜」
「むすこお食事タイムやから邪魔せんとって」


まぁこんなアホな時間も楽しいし、幸せだなぁ、なんて思ってしまうんやから、家族の絆ってすごいと思う。さてと、授乳が終わって寝かし付けたら、蔵ノ介に思いっきりあまえよう。


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