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03:現れた超名人




グリグリグリ
「ニ゛ャァーーー!!」

「「「…」」」


まさに悲痛な鳴き声…否、泣き声とも呼べた。

ここは任務受付所。
飼い主である火の国大名の妻マダム・しじみに頬擦りをされペットの猫は先程までマタタビで上機嫌だった姿とは打って変わり、涙を流していた。
その表情、声からも分かるように本気で嫌がってる。



「ああ!私の可愛いトラちゃん。死ぬほど心配したのよォ〜」


抱き締める力が半端ではないマダム。
心配だったのは分からないでもないがその豊満な体をトラへ無遠慮に押し付け圧迫させていた。
一言多いが、マダムよりもトラのほうが既に死にそうだ。


(ギャハハ、ざまーねェってばよあの莫迦猫!)
(逃げんのも無理ないわね、アレじゃ)


仕舞いには泡を吹き気絶している猫を見て傷だらけのナルトは楽しそうに笑い、サクラは少しばかり同情する。
お礼を言いながら受付所の者に代金を渡し、マダムは猫と共に去っていった。
あのマダムの過保護さか体つきをどうにかしないとまた脱走する可能性があるかと思われるが、そこから先は個人の問題。
円満に解決する事、もう任務が来ない事を願いながら一同はそれを見送った。


「さて!カカシ班第七班の次の任務はと…」


受付所に座り、任務の難易度を分けていた火影は散らばるいくつもの巻物から一つの巻物に目を通す。
その巻物に記載されているものが下忍が行える程度の任務なのだろう。
下忍が出来るのは主に雑用だ。それでも手伝って欲しいという依頼主はその依頼金の安さと効率の良さを認め、意外と多い。


「んー…今日はあと老中様の坊っちゃんの子守りか、芋掘りの手伝い…」
「…」
「駄目ーッ!!そんなのノーサンキュー!!オレってばもっとこうスゲェー任務がやりてーの!他のにしてェ!!!」


今日はペットの捕獲だけで解散かと思っていたセッカは火影の言葉に顔を顰めた。
だけどナルトが手で大きな×印をつくり他の任務をしたいと抗議した事で更にうんざりとする。


(…離れたい)
(…一理ある)
(もー、めんどい奴!!)
(はぁ…そろそろ駄々捏ねる頃だと思った)


ナルトの言葉に愚痴るセッカ、賛同するサスケ、苛立つサクラ、呆れるカカシ。
各々違った思惑でナルトを見やる。
そこで、火影の隣の席にいたイルカががたと席から腰を上げた。


「莫迦野郎ー!!お前はまだペーペーの新米だろーが!誰でも初めは簡単な任務から場数を踏んでくり上がっていくんだ!」
「だってだって!この前からずっとしょぼい任務ばっかじゃん!!」
「…そのしょぼい任務でさえよくドジ踏むのに」
うっせー!!手伝わねェセッカだけにはンな事言われたくねェってばよ!お前いつか傷だらけにしてやっからな!!」


びしっという効果音を付けてセッカを指差すナルト。その瞳には闘争心が燃えている。
セッカは顔を逸らし、そんな熱いナルトの言葉を聞き流した。


「…、ナルトに何があったんじゃ?」
「いや、最近色々ありまして…」


火影の素朴な問いにカカシは曖昧な表情で笑った。


「まあナルトよ…お前には任務がどういうものか説明しておく必要があるな」


火影は気を取り直してナルトを見る。
まだ下忍になりたてであるナルトを諭すその眼差しは里の責任者としての威厳が宿っていた。


「里には毎日多くの依頼がくる。子守りから暗殺まで…依頼リストには多種多様な依頼が記されておって難易度の高い順にランク分けされておる」
「…」


煙管から煙を吐いて静かに続ける火影。
セッカはこの火影の話はきっと長くなるなと察した。


「里では大まかに分けて儂から順に上・中・下忍と能力的に分けてあって…」


予想通り、基礎中の基礎を延々と話し続ける火影。
まさかこんな受付所のど真ん中で火影直々に教えを乞うだなんて。
何度も聞いたことのある台詞の数々をセッカは適当に聞き流す。


「…とは言ってもお前らはまだ下忍になったばかり。Dランクが精々いいとこじゃ」


漸く終わった説教染みた教え。
だけどナルトはそんな火影を余所に…


「昨日の昼は豚骨だったから今日は味噌か醤油だな」


今日の昼食の献立を頭の中で考えていた。
おまけに火影にも聞こえる声を出して、だ。


「きけェェェイ!!」
「!!(びくぅっ)」


これには流石に火影もキレた。
その大声にナルトは肩を揺らし驚く。


「ど…どーもすみません」


部下の失態は上司の責任。カカシが愛想笑いを浮かべて謝る。
だけどナルトは頭の後ろで手を組み、不満そうに口を尖らせた。


「あーあ!そうやってじいちゃんはいつも説教ばっかだ!」
「…」


どうやら自分が時間をかけて説明した教えは無駄に終わったようだ。
相も変わらずといったそのナルトの態度に呆れる火影。
だが、次のナルトの言葉で火影の考えは変わった。


「けどオレってばもう…いつまでもじいちゃんが思ってるような悪戯小僧じゃねェんだぞ!ちゃんとした忍者だってば!!」


ナルトはそう言ってふんと背を向ける。
もうあの頃の悪戯ばかりして他人の気を引いていた自分ではない。一人の里を守る忍だ。


「…」


まさかナルトからそんな言葉が出るとは思っても見なかった。
言うようになったなと火影は秘かに笑みを浮かべる。
そしてとうとう降参の意で両の手を軽く掲げた。