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03:銀の忍




「…]


頬杖をつきセッカは教室の一番端…窓際の席へと座っていた。
その顔は外の景色を眺めては教室にかかっている時計を見て時刻を確認し、ため息をついて再び外へ。
かれこれ数十分繰り返している行動だ。

何故、と問われれば答えは一つ。
自分達第七班の担当上忍が来ないからだ。

現在教室にいるのはセッカ達の班だけ。
他の卒業生は既に担当の上忍を紹介され外へと連れられて行き、教室の席はどこもがらんとしている。
にも関わらず自分達の担当上忍は未だ現れない。一体どういうつもりなのだろうか。

すると。


「ちょっと何やってんのよナルト!」
「ニシシシ、遅刻して来る奴がわりーんだってばよ!」


突然のサクラの注意する声とナルトの笑い声。
窓から前へ視線を向けた。見ると踏み台に乗ってドアの隙間に黒板消しを挟んでいるナルトの姿。
ドアを開けたら黒板消しが頭に落ちるという…簡単で単純な罠を仕掛けている最中だった。


「フン。上忍がそんなベタなブービートラップに引っかかるかよ」
「ったくもー!私、知らないからね!(こういうのけっこー好きなのよー!)」


悪戯小僧の本領を発揮しているナルトにサスケは冷静に結果の分析をした。
一方サクラは注意をしながらもどこか楽しそうにその罠を見つめている。
先程中庭であった事など嘘のように言葉を交わしていた。
…もうなかった事にして気持ちを切り替えたのかもしれない。


「…」


だけどセッカはその輪に入る事はしなかった。
便乗する事もなく止める事もせず、唯遠巻きに観察するだけ。

と、その時。


「!」


教室の外の廊下から一つの気配が近づいてきた。
ナルトはそんな足音を聞き、期待を込めた眼差しでじっとドアを見つめる。
そしてす、とドアを開く手が覗いて…


ガラ
ばふっ



見事、ドアが開けられた事によって入り口に仕掛けてあった黒板消しはその人物の頭の上に命中。
白いチョークの汚れがその者に降りかかる。目を丸くする相手。


「きゃははは!!引っかかった!!引っかかった!!」

「先生ごめんなさい。私は止めたんですがナルト君が…(いいわ!読み通りのベタなオチ!)」

(…これで本当に上忍か?頼りなさそうな奴だな)


その様にナルトは大声で笑い、サクラは表面上謝り、サスケは呆れた。
だけどその中。


「!」


セッカはその人物を見て、固まった。目を疑う。
だけど何度見ても特徴的な風貌…特にあの銀髪は変わらずそこにある。
そしてそんな上忍は、一人しか思い浮かばない。


現れたその人物の名は【はたけカカシ】。
木の葉の優秀な上忍であり、その中でも指折りの実力者だ。
その実力は数々の難しい任務も彼にかかれば見事にこなしていく程で、エリート上忍と呼ばれているのも聞いた事があった。

確かに目の前の上忍ならばナルトやサスケの班を受け持つ者としての技量があり、相応しいと思う。
普通に考えると自分も妥当な人選だと判断しただろう。
但し、それは自分がこの班にいない場合のみで。


「…」


イスカの姿の時も、姿を見かける度に避けてきたこの男。
はっきり言って苦手なのだ。
掴み所がなくて、人を翻弄して、心を暴こうとする。


あの目が。


そう思いながら、その姿を見つめる。
すると頭の白いチョークの粉を払いながら入ってきた相手の視線が静かにこちらを向いた。


「!」
「…」


黒いその片目と視線がぶつかりそうになる。素早く顔を伏せた。
この不自然な反応は拙いと分かってはいるが、目を合わせる訳にはいかなかった。
カカシはセッカを暫く見て、それから近くの三人を見る。


「お前達四人が第七班、か」
「おう!」


カカシは顎に手を添え、言った。
それにナルトが黒板消しを片手に元気良く答える。


「んー、何て言うのかな」


ナルトの笑顔にカカシもにっこりと笑いかけた。

だけどその直後。



「お前らの第一印象は嫌い、だ」



その笑顔を貼り付けたまま、第一印象は最悪だと一同に言い放った。
いくらナルト達といえどそれには思わず絶句してしまう。

そうして教室には、なんとも言い難い重たい空気が流れたのだった。