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02:いたずら小僧






窓から漏れる明るい光と鳥の鳴き声。


「…」


それに私は目を開けた。
意識を周囲へと移すと、そこはいつもと変わらない自宅の寝室。
上体を起こせば下にあるベッドがぎしりと軋んだ。

もう朝らしい。
つい先程次の任務を与えられ、自宅に帰ってきたと思ったのに。
だけどそれからの記憶がまるでない。どうやら余程身体は疲れていたようだ。

窓の外を見ると随分日が高く昇っていた。
良い天気だと、太陽に照らされた青空が告げる。晴天とはまさに今日のような日だ。
雲も少なく窓から見える草木は穏やかにその葉を揺らしていて――全てが澄んで見えた。


「…」


その空模様を見て今日の予定はすぐ決まった。
行き先を思い、手が早々と薄汚れたベッドシーツを剥ぎ取る。
昨夜付いた血のにおいが僅かに鼻を掠めたが、構わずそれを脱衣所へと運んだ。




身体を洗い、別の服に着替えた。
汚れを落とした後の体に身に纏ったのは紺色のワンピース。更にその上からフードが付いた黒の上着を羽織る。
非番時にいつも着る服装。これで出かける準備は整った。
後は出かける前に食事でもと思うが、暗部の仕事の翌日食欲が湧かないのは毎度の事で。
食は細いほうではあるが今回も例外なく空腹という感覚はなかった。
唯感じるのは微かな咽喉の違和感だけ。

それを鎮めたくて冷蔵庫の中にあった飲み物を口にする。
喉がじんわりと潤い、その感覚が薄まっていくのに小さく息をついた。
植物も水を与えられた時こんな感覚なのだろうか。

と、そこで思い出した。
辺りを見渡すもやはり買った覚えもない物は当然この部屋にない。
だけどあそこに行く時には必ず持参している為、今回もなくてはならないもの。

それは、花。
それも真っ白の花だ。

あそこへ行く前にその花を買わなければならない。
そう思い飲み物から口を離して財布がある引き出しの棚を見る。
だがその目が、棚の上に置いてある写真立てで止まった。

そこにはしわくちゃで、酷く汚れた古い写真が一枚。
色褪せていて辛うじて顔が判別出来る程度で、一体どこでどういう状況で撮ったのかも覚えていないその写真。
それでも“あの日”、自分が託された思い出の欠片。


「…」


腕を伸ばして写真に触れた。
朽ちてしまわないように、そっと。
一人一人の顔を確認し、それから名残惜しくも手を離して棚の引き出しから財布を取り出す。
そして上着のフードを目深に被り、部屋に立て掛けていた自分の身の丈ほどある大太刀を背に携えると、部屋を出た。
ぱたん、と玄関のドアが閉まる音が小さく響き、静かに止んだ。