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08:秘策




「さーて、暴れるぜェ!!」


真っ直ぐ敵を見据え、笑みを浮かべるナルト。
その目には絶対に勝つという意気がありありと満ち溢れていた。
再不斬はそれに一瞬黙るが、再び余裕のある笑いを漏らす。


「くく…えらい鼻息だが、勝算はあるのか?」
「お前ら何してる、逃げろって言ったろ!俺達の任務はタズナさんを守る事だそれを忘れたのか!?」


再不斬の殺気が強まったのを感じ取り、カカシが叫ぶ。
本来の任務を思い出したナルトはぐっと息を詰め、タズナを見つめた。


「おっちゃん…」
「!」


タズナは肩を揺らし、暫く押し黙った。
その顔が下へ俯いていた為表情ははっきりと窺えない。

だが。


「…なぁに。元はと言えば儂が蒔いた種」


その一言と共に顔を上げる。
そこには先程のナルトと同じように、勝気な表情があった。


「この期に及んで超命が惜しいなどとは言わん。すまなかったなお前ら…思う存分に闘ってくれ!」
「おっちゃん!」
「フン…という訳だ」
「私もおじさんを守るわ!」


了承を得、サスケとナルトが再不斬に好戦的な目を向ける。
サクラもそんな一同の背を見て強く頷き、タズナを護るようにクナイを構え直した。


「…」


それとは逆にセッカの表情だけは晴れなかった。
眉を寄せ、一人渋い顔のまま一同を不可解そうに見つめる。


「くっ…くくくく…!」


その光景を見て突如笑い出す再不斬。
ナルト達が警戒を強め、相手を睨む。


「ほんっとに!成長しねーな。いつまでも忍者ごっこかよ」


そうしてふいに笑うのをやめたかと思うと、静かに左手を持ち上げてその手を見下ろした。


「俺ァよ…お前らくらいの歳の頃にゃ、もうこの手を血で紅く染めてんだよ」


強い殺気が辺りの空気を巻き添えにし、肌をちくちくと刺激する。
ナルト達はその殺気に背筋を凍らせた。


「【鬼人再不斬】…!」
「ほぉ…少しは聞いた事があるようだな」


カカシが呟く。再不斬は口端を上げて隣で捕らえた人物を見た。
セッカも聞いた事がある、目の前の敵の異名。
しかしその由来はとても名誉のある内容ではない。
そんな中でカカシは再不斬とぶつかった視線をそのままに、言葉を紡いでいく。


「…その昔、【血霧の里】と呼ばれた霧隠れの里には忍者になる為の最大の難関があった」
「フン…あの卒業試験まで知ってるのか」
「あの卒業試験?」


カカシと再不斬の会話にナルトも入り込む。
伏せられたその言葉の意図を知ろうという態度が行動にも表れ、その足を一歩近づけた。
再不斬が咽喉を震わせる。


「…くくくっ」
「なんなんだってばよ、あの卒業試験って?」
「くっくっく」


いつまでも声を押し殺して笑う相手に痺れを切らしたナルトは睨みつけるが、全く微動だにしない再不斬。
そして自分の口調の速度を保ったまま、静かに言った。



「生徒同士の殺し合いだ」



残虐な、一言を。


ナルトがその場で固まる。当然の反応だった。
それまで共に勉学に励み、行動し、同じ釜の飯を食った仲間が殺し合いをする。
どちらかの命が尽きるまで、どちらかの息が止まるまで。
お互いの夢を語り合い、助け合って、競い合った仲間だったのに、だ。

それが一変して殺し合いへと発展する。
試験が終わる頃には受験者の死体がその場に山積みになる。
それは想像を遥かに超えるだろう、惨劇だ。

カカシが瞑目し、再び続けた。


「だが十年前…霧隠れの卒業試験が大変革を遂げざるをえなくなる…その前年その変革のきっかけとなる悪鬼が現れたからだ」
「変、革…?」


サクラが問う。
その顔は先程の説明を聞いて血の気が失せていた。


「変革って…その悪鬼が何したっていうの?」


再不斬はカカシの説明を邪魔するでもなく、唯その肩を僅かに震わせる。
カカシが一呼吸間を置いて、答えた。


「何の躊躇もなく…まだ忍者の資格も得ていない幼い少年が、百人を超えるその年の受験者を―――…殺し尽くしたんだ」


カカシの横で、上空を見る再不斬。



「楽しかったなァ…アレは…」



歪んだ笑み。不気味な声。狂喜に満ちた目。
まるで当時を思い出すかのように、唯青い空を見上げる。
震えていたのは―――…その時の快感を思い出していたからだった。
ナルト達が悪鬼と呼ばれたその幼い少年が成長した者が目の前の再不斬だという事実を理解するのに、そう時間はかからなかった。

再不斬はゆっくり強張っている一同へと顔を戻した。
だがすぐにセッカだけしか興味がない様に、その姿を捉える。
絡みつくような視線に肩を揺らすセッカ。