#33 珈琲豆の教訓
コーヒーブレイク。

ダイニングテーブルを挟んで口にする、まったりとした午後。

インスタントは飲まない派。熱い出来たてを飲むのが好き、らしい。

真夏であろうと。

「……熱いです蒔田さん」

「夏だからといって冷たいものばかりを口にしていては体に毒だ」

と言いつつ、こめかみから伝ってますけど。汗が。だらだらじゃないですか。

それに朝はジョギングしてるじゃないですか、そんなにまでして飲まなくても。

「……今度から冷やしてアイスにしよう」

氷とか凍らして。カフェでよくある。うん、名案だ。

扇風機からの風。開け放した窓、廊下の向こうの窓も。白系の家具で統一されたダイニング。彼の背後のカウンターキッチンも。

風が、吹き抜ける。

いい気持ち。

両手の間にまだ熱いコーヒーがあるのを除けば。

マグカップを手にする。

喉の間を熱さと苦い風味が通り抜ける。ブラック。これが、好きなんだとか。

日頃の言動は完全Sなくせに妙なところでMだったりする。

そして、飲み終えていた。

頬杖ついて、じい、と見つめていた。

右の口の端だけほんの少しあげて。

「……なによ」

悠然と、観察でもしてるまるで王様。

「いつ、気づくのかと思ってな」

頬杖ついたままにかすかに微笑む蒔田さん。

あたしはもう一口、流す。

「欲しくてたまらないって目線を送ってるってことに」

むせた。口からこぼれ。

倒れかけたカップは彼の手で押さえられた。

服にかかったのか確かめる前に、傍に急いで来た彼にシャツのボタンを外されていた。

肌を、手でなぞり。「火傷してないか?」

全然へーき、と言い終える前に抱きあげられて、白いシャツは洗濯機へ直行。

あたしは洗面台の上へ。

「え、えーっと。平気だってば」

氷と氷のうとアイスノンまで準備して。

「赤くなっている」真顔で覗き込む蒔田さん。髪の毛が顎に刺さってちくちくする。

その顎を引けば、確かに、鎖骨のあたりがかすかに。

けど痛いってほどでもないし、そもそもドジなあたしは料理で手を切ったり火傷も時々するから、それに比べたら全然なのに。

「すまなかった。俺のせいだ」頭を下げる。

「う、ううん。全然ほんとに」

それよりも、ショーツ一枚で置いとかれてるこのパン○ース状態をどうにかして欲しいんですが。

あたしにだって羞恥心はあります。

鎖骨を押さえている氷のうが冷たいし。

振り向けば鏡がとんでもない構図を映しているはず。

「今度から、危険物を持たない状態のお前をからかうことにする」

「じゃあ、蒔田さん」あたしは氷のうをひょい、とあげておどけて言う。「これは危険物として認定しますか?」

ふ、と蒔田さんは表情を和らげ、

「するものか。水攻めでも氷攻めでも好きにしろ」

しません、と突っ込む前にきつく吸い上げられてしまい、別種のあえぎをこぼすが先だった。



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