#24 不公平な肌質
うっすらしわが刻まれている。眉と眉の間。

頬はほんのり、紅を帯びて、火照ったからだ。

その――抱かれた余韻が見るに残ってはいるのだけれど、しわの件は気に食わない。

台所にて、蒔田さんはミネラルウォーターを飲んでいた。

「飲むか?」

このひとは真っ直ぐな目でいつも見つめる。揺らがず、逸らさず、あまさず。こちらを気恥ずかしくさせるほどの眼力。

こく、こく、とあたしが飲み干したグラスを受け取りながらに言った。「どうした?」

そう、考えごとも悩みごともお見通し。抱えていたならすぐにバレる。

「ここ」
「……ああ」
「が、いやなの」
「そうか」

それ以上なんか言うことないの。

「あんなに力を入れていたら、こうもなるだろう」

と、なぞる。指の筋に沿って、熱くなる。

「貫かれて」

目を合わす。

真っ暗で、底の見えない瞳が。

「深く、深く」

膝がかくん、と落ちた。と、直ぐに彼は支えに入る。あたしの両脇を。

「大丈夫か」
「……ううん」平気、と答えて運ばれるのがパターンだけど、たまには首を振ってみる。

「甘えるな」
「甘えさせてよ、もっと」

冷たく言い放った彼の、太い首に手を回す。

あたしの背中を撫でながらに彼は言う。

「あれだけよがっておいてまだ、足らないのか」

言いきらぬうちに右手が動いた。



彼のことは気持ちよすぎる。

触れられるだけで痺れ、目を合わすだけで溶かされ、声を聞くだけで砕けそうになって。

こんな彼を深部に招き入れれば、どんな事態になるかは想定以上のもので。

いやいやと、涙ながらに首を振る。

「嫌じゃないだろ」

とあたしの指先をくわえこみ。

ゆるゆると突く、その動きに。

一度冷えたはずのからだが沸騰し、絡まり合う。

幾度となく投じられたエクスタシー、矛先にいつも彼が居る。

苦悶。恍惚。陶然。

絞られたような欲望、その在り処を求めて。

「壊れ、ちゃ……」

「信じろよ」内からも響く低音。

「どんなお前でも見ていてやる、だから」

安心して壊れろ。



再び、鏡を覗くあたし。

後ろから、歯を磨きながら、彼は。

「人は、誰でも年を取る。年齢には逆らえないものだ」

年齢無視したビジュアルしといてなに言ってんの、このひと。

みぃん、と眉と眉の間を引っ張るあたしの手を取り、

「伸ばすと、反動が怖いぞ」

「じゃあ、どうすればいいの」

あたしよりもよっぽど眉間のしわ歴が長いくせに刻まれてない彼は、決まってるだろ、と言いながら、

「うきゃっ」


「別のことに支配されろ」




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