#23 楽器より高い
破けるくらいに広げられて。
長い、人差し指と親指で。
まっ平らにさせられたそこを、ざらり。
一筋が垂れる。
ざり、ざらり、またもなぞられてしまうと。
とろ、とろ、伝う。動きよりも潤沢に。
顎を引けば、恥ずかしいところにうずまる彼の頭が。
顔を覆いたくも、なる。
「ちゃんと、見とけ」
あたしと目線を繋げたままに、舌いっぱいを使って舐めあげる。
こぼれた声。
もう一度あげさせた上でこのひとは没頭する。
真夏の犬が水を飲むようにしちゃしちゃと。
赤子が吸いつくように生存本能剥き出しに。
ソフトクリームを初めて食べる子どものように。
初恋を覚えた少女のように、ちゅ、と甘く口づけて。
溝の下から上までをたどり、歯と歯で挟み、はじく。
はじけ飛ぶ感覚。震わされて。
どこまでも貪欲なあたしの生理的反応。
双曲線。到達点。二次関数のカーブが頭に浮かぶ。
躊躇なく飲み込んでいく喉仏。いくら吸われても追いつかない容量。
火よりも熱い。どろどろに溶かされてしまう。感覚も聴覚も嗅覚も。こんなにもなるのは彼が初めてで。
尖らせた舌が供給源を探る。あたしのすみずみまでを知り尽くした舌先が。
深さ求むが、届かない。
これ以上をあたしは知っている。
「腰が、揺れている。そんなにも欲しいか?」
唐突に膝頭を軽く噛まれて、それだけで嬌声。
目を合わせた一瞬、彼は笑っていた。
次の瞬間――
腰を強く固定して縦横無尽に潜る。舌が。唇が、指先が。暴れ、攻める。さっきまでの動き、至らしめた行動が手加減したものだったと思い知らされる勢い。
逃げ場もなく割り開かれ、解体されて、あげさせられる悲鳴。加速する。
壊れそう。
なのにそれを欲すこの実体。
あたしからはおびただしい量があふれ、ぬちゃぬちゃと引き出さす獰猛な舌。
極限と、極限の上を知らされ、あがる体温。室温。領域。
頭の奥がちぎれそうな感覚。ああ、もう――
例えるにはコップ一杯でも足りない。
からだの下に敷いたタオルは腰の辺りまでびっちゃびちゃ。
焦点が合わない、頭の裏側を見ているかの感覚。淡い星が瞬く。余韻。脱力。けだるさ。
そこへ――ずぶり。
本格的な悲鳴をあげた。
「駄、目、も――あ、あ」
侵入許すごとに卑猥な声が出る。こんな声を出せるのかと疑うほどの。
汗が噴きだし、涙が湧き、あたしの中は我慢ならない。
ひくついて動揺している渦中に、強制させられる快楽。
みっちりと、かたちを記憶するかのように。
びっちり奥に到達されただけであたしは達す。
飛ばしかけた意識、律動で呼び戻される。
駄目。
いったばかり、なのに。
声に出せない、代わりに悲鳴。叫び過ぎた喉を案じてか、荒々しく唇を奪われる。
絡ますなまめかしい舌、逆効果。
首を振る。と耳を包まれる動きですら着火剤。
飲み込まれる唾液、あえぎ。
出せないもどかしさ、代わりに大量の蜜がこぼれる。スライドする度にごぼごぼと絡みついてしまう。
自分がなにを見ているのかも分からない。
正直なあたしのからだは、失神しそうな中でもそれだけを求め続ける。
感じること。
彼自身が肥大化するごとにあたしも導かれ。
唇離され、あたりに散らばる言葉を呼ぶ。叫ぶ。わめく。至る。任せる。受け入れる。飛ばす。
最奥に叩きつく彼の欲望。
飲み干していくあたし。
「あ、あ、ん……」ひくん、ひくん、とからだごと震える。ダイレクトな脈動に自然、嬌声がこぼれ。
ふう、と息をこぼした彼が、あたしの貼りついた前髪を掻き分ける気配。
「楽器よりも高いな、お前の感度」
それを聞いてあたしの中は再び震えた。
*