#54 ダイニングで開始(2)
 可愛がられる以上に満ちてしまってる。
 冷たい台の上で。
 熱い刺戟を。
 ふ、とろうそく消す息を吹きかける。
 実際は火を灯す言動。
 唇寄せ掛ける彼の、手の甲を、あたしは、掴んだ。
「やだ、もう……」
 既に眼鏡の外れた彼が腰を起こす。すこし瞳を開かせて。
「ほ、欲しいの。お願い……」
 もういい。
 どうせ、酔っているのだから。
「口じゃなくって。あなたで。あたしのなかをいっぱいに、して」
 顔を手で覆いながら、とんでもない台詞を言ってみる。
 ……
 様子を、伺う。
 彼は。
 とんでもなく赤くなっていた。
「や、やだ。どしたの」こっちが照れる。
 珍しく目を覆い、よそを向いて肩で大きく息を吐く、純情っぷり。
 初めて恋を記憶したときのときめきを、覚える。
「……どうもしないさ。どうも……」
 耳まで赤いくせに。
 背中を包んで、あたしの上体を立てると、
 自分だって全身、靴下まで脱ぎさって。
 胸と胸が合わさり、
 首と首がくっつく。
 背中に手のひら。
 首筋の匂い。
 片手が、動いて。
 入って、くる。
 器用に。
 彼だって昂ぶっていた。
 正直さは隠せない。
 痺れる、
 背骨が溶けてしまう、気持ちよさ。
 耳の下に、頼る。
 とそこへ。
 持たれて、
 腰が浮く。
 入れ替わり。
 彼が座り。
 あ、たしのなかに。
 深く刺さる。
 反転した刺激。違和感。
 別の角度での、高ぶり。
 くずおれる。
 支えられる。
 軽く、……至るほどの刺激。
 なぞられる二の腕の後ろに、電流。あたしは達するといつもこうなる。
 おさまるまで。
 抱きしめられているのが心地、よかった。

 じっとしてる。
 あたしのなかで。
 支えながら。
「……動かない、の」
「動いてみろよ」
 なんて我慢強い人なの。
 保つのって辛くないのかしら。
 よく見れば彼だってつま先がつく程度だし。
 腰を持ち、彼がするように。
「あ……」
 強すぎる。
 どうしよう。
 彼を満たす、ためというより。
 自分が求めてる感じがしてしまう。
 事実抜く度にこぼす感覚があるし。
 音だって正直だ。
 それだって、彼は昂ぶるし。
 キスできないのが惜しい、くらいだ。
 彼は、動かない。
 すこし汗をかいたから、様子を見てみると、艶やかに。
「……丸見えだな」
 なに。
「おまえの顔と、ここが」
 指で示されて、思わず崩れた。
 そんなあたしの背を抱きながら、彼は。
「場所を。移そうか」

 繋がったまま運ばれて、しまった。
 重いのに。
 腰が絶対痛いのに。
 寝室の電気は点いている。
「消して」
「やだ」
「いじめっ子」
「感じたがり屋」
 背中を掴まれて上下逆転。
 セックスは人々に器用さを要する。
 それと、
 愛と。

 明るさのなかで部屋は静かで。
 聴覚はあたしたちの立てる淫靡に奔走する。
 両手で抱え込んだ膝と膝のあいだから、うっすらと彼の目を覗くと。
 膝頭を、噛まれた。
「きゃあ」
 舐められた。
 ――もう、
 どうにだってなってる。
 欲望を受けて人形みたく固くなり、他方。
 求める、血肉の通ったやわらかな人間であり。
 のけぞる。
 持って、られない。
「キス、して」
 ふさいで。
 あたしのことすべて、ふさいで。
 きぃん、と耳の鳴る感覚を覚えたときに。
 熱く深く精を放たれていた。

 気がついたときにあたしは下になっていた。
 たぶん……一分も経ってない。
「気持良さそうな顔をしていた」
「一臣さんだって」
「寝息だって立てていた」
 起こすと思い、ためらわれた。……と、目を逸らして彼が言い。
 引きぬかれる。
「ああ」
 病気かもしれない。このときも感じてしまう。あたしと彼の体液がすごく、あふれることに。
 その流れを、
 膝を割って、眺めている。
 明るいのに。
「そんなとこ、見ないで」
「見てなどないさ」と首を振る。「こうしてやる」
 封じられた。
 ああ。
 こんなにされちゃ、もう、「持たないよ、あたし」
 自分から言っただろ、と膝の裏を押さえながら、彼。
「あたしのことをふさいで、と」
 ――そ。
「そういう意味じゃ、な、きゃ」
 かき出すざらつきに。より入ろうとする本能に。全身弛緩させながら悦びを覚えるのだと思った。



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