#9 気持ちいい――だろ? 01
どんなところを好きになったかなんて、知らない。
厳密さは要らない。
心深く、思うこの気持ちさえあれば。
理由づける論理なんてものは、整合性を持たすための建前でしかなく、例えば、彼みたく目を細めて笑う人なら誰でもいい、などとは思わない。
同じ声、同じ見目形さえあれば惚れる、かもしれない理屈は決して満足させてはくれない。
彼の、指が好き。
口の中にいっぱい入れる。子どもみたく従順に。出すときに爪を甘噛み、ほおばるを繰り返すあたし。
優しく撫でてくれる。大きな手。
「好きだな……」
うん。
好きなの。
猫みたいに細まる目が。黒い瞳を縁取る、うす茶色い虹彩が、やわらかくきらきらして。
虹の奥を見ているかの昂揚。
「美味しい?」
と、聞いてくるから、目線を繋げたままに、舌の裏を使って撫であげる。震える反応もろとも、あたしは息を吸い、くわえこむ。
食べてるみたい。
先の穴に舌をねじ込ませると、声を漏らす。大きくのけ反る、素直に出たそれを吸う。
よしよし、とまた撫でられてなんだか遊女みたいな。
手を添えて、顔の筋肉を駆使しているとほどなくして、彼は身を起こす。
ちょっと怖くて、楽しみでもある。
見せる機会なんてない、排泄に使うようなだと思っていたところから、入って来る。
抵抗などしていないのに、あたしの膣は大げさにひくつく。
ぬるついて、合わさる。
彼の体液とあたしの体液が。
直接的に感じる、彼の拍動。
挿れ切ったときに必ず、ふう、と安堵の息をこぼす。
「……んだよ」
あたしが笑みを浮かべたのを見ての一言。
いつも、気持ち良さそうにしているから。
気を許し過ぎたとは認めない、強がるのは男の人の性分。
キスを、返される。されるときは違う、文字通り唇を貪る動き。
大きくなる彼を感じながら、あたしは口を開き、物理的心理的欲求を飲み干していく。
ふち震え、蜜を垂らしながら、より強く締めつけるこの感覚。生理的な快楽への欲求。余裕などはるか彼方。
顔をのけぞらせたならば、喉仏を愛撫される。
胸にするように激しく、吸いつかれてしまう。
鎖骨を、指の腹で撫でられ、道筋をたどられ、突かれるゆるい動きにあたしは愉楽の涙を流す。
そんなだけでこんなになる。あたしの気持ち良すぎる顔を、彼は、上から見下ろす。
顎先を摘ままれて、逸らす自由を奪われる。
いつから、こんな感じるようになった?
いいながら右の手がつねる。「痛ぁっ」失せぬうちにさわさわと撫でる。
とろり、自分がとろけたのが分かった。
この反応、彼は違うだろ、とくつくつ笑う。
「気持ちいい――だろ?」