◆11(1/6)
 時間をかけてほぐしてくれているのがよく分かった。
 
 触れる手がこんなにも優しいなんて、あたしは知らなかった。
 
 脳髄がやわらかく染まる感覚。
 
 視界が、滲んでいく。
 
 初めて触れる粘膜。もっと深く、欲している。
 
 瞼をそっとなぞられるから、あたしは自分が目を閉じていたことに気がついた。
 
 切なげな色を宿して揺れる瞳に、大丈夫、と囁く。
 
 全身が、彼という存在を求めている。
 
 確かめるように、時が満ちるのを待つように、あたしを開いて行く彼の全て。
 
 ぽたり、ぽたり、と雫が頬に降りかかる。
 
 混ざり来る彼の匂い。触れる広い背中。感じる、自分のとは違う質感。
 
 あたしの上で彼が動く度に、からだの中を電流が走る。
 
「香枝。……香枝」
 
 絡ませる指、力のこもる手、見つめる色。
 
 求められていることに、また新しい感情が生まれゆく。


[ 57/78 ]

[*前へ] [次へ#]
[2]しおり
[0]目次

[9]HOME

- ナノ -