◇4(1/7)
「そうなん、良かったやーん」
 
 バイトの話をすると、彩夏は喜んだ。
 
 店長は、厳しいけどジェントルマン。
 
 ホールの平子さんは、線が細くて女の子っぽい。
 
 調理の二人は白髪混じりのおじいさん。性的なものを感じない。「よー食べえや」といつも美味しいまかないを作ってくれる。
 
 時折現れる店のオーナー、ママさんは呼び名のとおり、ママさん。昼ドラに出て来そうな風情で、子どもが見たら泣きだしそうな色の服を着こなしている。
 
 とはいえ、彼女以外には極力寄らない。一メートル空けるのはデフォルト。触るなど、もってのほか。
 
「でも、握手は嫌じゃなかったなぁ。なんでだろう」
 
「一歩前進やん」と彩夏はにかっと笑う。
 
 だが、良くしてくれる人たちは別として、ある思考からは抜け切れない。


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