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「遅くまですまんかったねぇ」
 
「いえ、楽しかったです」
 
 夜中にカラオケなんて、普通の親じゃあ出来ないだろう。
 
 非常識、と考えられなくもないが、あたしは好感を持った。
 
『あの子。引き取って苦労かけたがやけど、真っ直ぐな性格に育ってんわ。言葉遣い、悪いけどなぁ』
 
 語る母親の表情は美しかった。そういうもんなんだな、と悟った。
 
 そして今、車はあたしの住むアパートから歩いて五分の距離で停まる。
 
「あ、こちらで大丈夫です。目の前ですし」
 
 始発で帰ると言っても、彼女は送ると言って譲らなかった。
 
 家を知られることへの不安、ぎりぎりの選択。
 
「有難うございました」ドアを閉め、頭を下げる。
 
「またバイトでな」助手席の彼の無表情が焼きついた。
 
 白んだ空、そこらのごみ箱をつつく烏。
 
 焼き肉臭い。髪も脂っこくて、今すぐ風呂に入りたい。
 
 顔は疲れてる、けれども、……なんだろう。
 
 解放を感じる朝だった。
 
 ひと眠りしたら久しぶりに実家に電話してみよう、そう思った。


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