「やぁ中也くん。今日も小さいね!」
「手前…今日を命日にしてぇみたいだな」



叩敲(ノック)もせずにドアを勢いよく開ける。すると執務机で書類の処理をしていた彼の手元からバキッと鈍い音がした。嗚呼、この間私があげた万年筆だ。そんな彼は人を睨み殺さんばかりのその目付きで私を見る。



「そんな事で一々腹を立てていたらマフィアなんてやってられないよ?」
「手前の余計な一言が無ければ腹なんか立てねぇよ!」




代わりの筆記具を探しているのか机の抽斗(ひきだし)を開けて漁る。何もなかったのか一瞬動きを止めてそっと抽斗を閉める。



「筆記具の予備の一つや二つ持っておかなきゃ。小学生じゃないん…嗚呼、中也くんは…」
「それ以上口に出したらマジで殺すぞ」



ドスの効いた声と額には青筋が浮かんでる。血圧が上がるよーと軽い口調で云えば、うるせぇ!と返された。やれやれ、なんて気の短い男なんだか。



「中也くん、カルシウムが足らないんじゃないのかい?」
「手前が来なきゃ十分足りてるんだよ」



書類の処理を諦めたのか、革張りの高級椅子の背に凭れ掛かる。私がいたら仕事にならないのに追い出さない。なんだかんだと云って彼は優しい。



「そんな事より、なまえ。何か用か?」



態々人の執務室までやって来るくらいだからと問う中也くんに厭、別に。と返す。だったら何しに来たんだと不機嫌な声を出す。



「決まってるじゃん!中也くんで遊ぶためだよ!」



そう言った瞬間、何かが私の顔を横切った。そしてドンっ!と大きな音を立てた後、ゴトっと鈍い音がした。横目でそれを追うと足元には装飾が綺麗なライターが落ちていた。ゆっくり自分の背後に首を向けるとそこには拳大位の穴が開いていた。どうやら中也くんが異能を使ってライターを投げたようだ。



「酷いなぁ。顔に傷が残ったらどうしてくれるんだよ?」
「知るか!」



ライターが掠ったのか頬がヒリヒリする。血は出てないみたいだけど女の子に怪我を負わせるなんて酷い男だ。マフィアの風上にも置けない。



「仕方ないね!中也くんが責任取って貰ってね」



中也くんの執務机の前まで行き、机に手を突いて体を乗せる。一気に距離を縮めて、反応が鈍っている中也くんの頬に音を立てて唇を落とす。私が怪我したのと同じ方に。悪戯っ子みたいに笑う私に呆気に取られる中也くんは可愛かった。

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