※ダンロン連載主設定




「はて、ここは何処だ?」



眼前に広がるのは久しく見ていない夜の闇に照らされたビルの光。全てを閉ざされたあの学園の無機質な建物の中とはまるで違う。外の空気、をどれくらいぶりかに感じる。これは夢なのかと問いたくなるがそうではないようだ。いくら私でも夢の中で普段と同じ、ここまでの思考を巡らせることはないだろう。一瞬、モノクマの仕業かとも考えたがアレはこんな事を私にはしない。



「あの、何かお困りですか?」



思考に耽っていると誰かに声を掛けられる。そこ方向、下げていた視線を真正面に向ければ1人の青年が立っていた。褐色の肌に金色の髪に異国の血を示すような碧眼。しかし掛けられた言葉は流暢な日本語という事は日本生まれ日本育ちなのかもしれない。



「突然すみません。こんな所で立ち止まって考え事をしてるようでしたので」



差し出がましいとは思いましたが声を掛けずにいられなかったと。側から見ればきっと優しい好青年なのだろう。だが私にはそうは見えず思わず溜息を吐きたくなったがそれは堪える。



「ただの考え事だよ。それともキミには私が怪しく見えたかい?」
「そんな、僕は善意で…」



彼は最後まで言葉を紡ぐ事なく私を見る。最初に見せた好青年の笑みなどなく、警戒心を見せる。たぶん彼は見せてるつもりはないのだろうがそんなものは気配でわかる。そんな生活をしてきていたのだから。



「自己紹介が遅れたね。私はみょうじなまえ。超高校級の参謀と呼ばれている」



私の自己紹介に怪訝な表情を浮かべる。名乗ったことより『超高校級の参謀』に反応したようだ。これは認識を改めよう。ここは外の世界であっても学園の外ではない…いや、学園の外であるわけがないのだが。



「女子高生の私が名乗ったのにキミは名乗らないのかい?」
「……安室透。探偵ですよ」



探偵、か。私の頭によぎるのはその名で呼ばれるクラスメイト。それは一瞬で脳内から消し目の前の男を見る。探偵と名乗った彼は確かに探偵もやっているようだけどそれだけではない。私の憶測が正しいなら彼は他にもいくつかの顔を使い分けているのだろう。




「僕の顔に何か付いていますか?」
「そうだね…付いてはいないけど『他』の顔が気になるかな」



クスリと笑った私に対して彼、安室透は顔色を変えた。すぐさま警戒の色を露わにし私を睨み付ける。少し確信を吐かれたくらいで顔色を変えるようではまだまだだね、と呟けば一瞬目を細めて再び好青年の顔に戻す。



「言ったはずだよ?私は参謀だと。これくらい雰囲気だけですぐにわかる、造作もない事」



一歩二歩と彼に近づく。近づくごとに体が強張っていくのがわかる。彼が一歩後ずさる前に彼のシャツを掴んで一気に距離を縮める。



「キミに興味を持った。何か困ったことがあったら手助けするよ」



吐息が感じられそうなくらいの耳元でそう言って離れる。キミなら私を見つけられるだろ?と微笑めば当然だと返される。この出会いが参謀とトリプルフェイスの関係の始まりだと誰が想像できただろうか。さぁ、事件の幕開けだ。

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