「緑間くん。これよかったらどうぞ」



おはようございます、と声を掛けてから通学用バッグの中から丁寧に包装された物を取り出し彼へと差し出す。なんなんだと言わんばかりに眉を寄せられてしまったけど。



「今日は緑間くんの誕生日でしたよね?この間、委員会のお手伝いをしてもらったお礼も兼ねてと、思ったんですけど……差し出がましかったですか?」



こちらを見上げたまま、何も言わない彼に少しばかりではなくかなりの不安を覚える。あのーと声を振り絞ると小さく息をつかれた。やっぱり迷惑だったのか。



「……なぜみょうじが俺の誕生日を知っているのだよ?」
「えっ……高尾くんが教えてくれました」



数日前にその話を聞いたと答えれば彼は、高尾め…と恨めしげに呟く。未だに受け取ってもらえないプレゼントを引っ込める事も出来ずにいると緑間くんが外していた視線をこちらへと向ける。



「わざわざ悪いな」
「ううん。中身は私の好みの物になってしまいましたけど是非にと思って」



個人的な趣味というか好きな物。これを緑間くんが気にいるかはわからないんだけど、気に入ってもらえたら嬉しいな。えっと、うん…嬉しいよね。



「本と…栞か」



プレゼントの中身は私が好きな作家さんの一番好きな作品。確かこの作家さんの作品は読んだ事がないって言っていたから丁度いいと思った。栞も見た瞬間に手に取ってレジに向かっていたくらい即決した物。



「どう…でしょうか?」



沈黙が怖い。こういう時に高尾くんがいてくれたら何か和むような事を言ってくれるのに、残念ながら今はいない。



「ありがとう」



本と栞に視線を向けたままポツリと呟かれた言葉。その言葉に思わず顔が綻ぶ。そして安堵の息を吐いてしまう。



「栞はバケットボールの柄なのだな」
「うん。緑間くんならこれかなって思いまして」



高校に入るまでは知らなかった。緑間くんが奇跡の世代なんて呼ばれるほどのバスケットボールプレーヤーだったなんて。



「改めまして、お誕生日おめでとうございます」



地味で本好きの私と仲よくして下ってありがとうございます。と付け加えて言葉を伝えれば、緑間くんは優しく微笑み返してくれた。

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