私は特に何も持っていない。彼らのように超高校級の名のつく人物じゃない。でも、先だってに起きた未来機関での事件には関わっていた……いや、巻き込まれたが正しいかな。



「……私、なんでここにいるんだろう?」



綺麗に並べられた机と椅子。そのうち一つに腰掛ける。そしてあの時のことを思い出す。あの時…私は資料室の隅で居眠りこいてたらなぜか、終わったはずのコロシアイが始まっていた。幸い、私の存在はコロシアイ終盤まではバレず、たまたま部屋に来た朝日奈ちゃんに助けられた。そこからがもう必死だった。だって私は超高校級の名を持っていない、ただの人間だから。



「そう、ただの人間…」



絶望落ちしたはずの77期生達が助けに来てくれなかったら、と思うとゾッとする。それから行く場のない私を彼らが手を差し伸べてくれた。でも…



「ここにいていいのかなぁ?」
「みょうじさん?」



机に俯して溜息を吐く。と、同時に掛けられた声にビクンっとして俯していた体を起こすと、教室の入り口に彼がいた。私に手を差し伸べてくれた彼、苗木くん。私より一つ年下の彼。



「どうかしたの?もしかして具合悪い?」
「ううん、そんなんじゃない」



何の接点もなく、ただ行き場のなくなった元同僚に行き場を作ってくれて人。



「やっぱり…僕達とは一緒に居たくない?」



ポツリと呟かれた声に私は弾かれたように顔を上げた。少し困ったような泣きそうな表情の彼に言葉を詰まらせる。確かに、私は彼らより一つ先輩であの超高校級の絶望になった77期生達とは同級生。でも、私は予備学科の生徒で何の取り柄もない。正直、居心地は悪い。同じ普通でも苗木くんの妹のこまるちゃんとは違う。


「……ごめん、ね」



何で謝ってるんだろう。私が謝る必要はない。かと言って苗木くんが謝る必要もない。俯きかけて落とした視界の端に黒い革靴が入る。



「それでも僕は、みょうじさんと一緒にいたいんだ」



そう言って彼は私の前に跪くように腰を落とし私の手を取る。小悪魔のような微笑みに私の心臓は射抜かれた。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -