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「もう一度、アルターエゴの報告内容に戻さないか?」
「そうだべ…希望ケ峰学園事務局ってのは、何を企んでるんだ…?なんで、俺らに殺し合いなんかさせてるんだ!?」
「んなもん知るかよッ!」



事務局と黒幕の意図か。ここが大きな問題ではある。その隔離と殺し合いの目的。



「1年前の事件が、すべての元凶と言っていたな」
「人類史上最大最悪の絶望的事件…だよね」
「聞く限りだと、かなり大きな事件みたいだけど…でもさ、1年前にそんな大きな事件なんて起きたっけ?」



1年前では私は日本にはいなかった。けど、そこまで大それた事件名を付けたのなら、海外にいた私の耳にも入っているはずだ。にも関わらず、ずっと日本にいた苗木くん達誰1人知らないなんて。



「その事件のせいで、希望ケ峰学園が閉鎖したという事は…少なくとも、この学園に関係した事件のはずだけど…」



この学園の全校生徒がみな殺しにされたのではと言う意見に、それほどの大事件なら新聞やニュースは大騒ぎだと返され肩を落とす。事件ごと隠ぺいされたという意見には誰も否定できなかった。



「いくら希望ケ峰学園といえども、そこまで出来るのでしょうか?」
「そんな学園に僕達を閉じ込める意図がわからない」



この学園の規模の大きさは知っている。ある意味世界で一番有名な学園なのだから。その学園の生徒が1人でも殺されたなら、世界中でニュースになるはず。それほどの学園なのだ。



「なんにしても…現時点で私達に出来る事は1つだけよ…希望ケ峰学園長を見つけ出す事…学園長を見つけて…すべてを聞き出せばいいのよ…きっと…学園長さえ見つければてそんな気が…」



やけに学園長にこだわる。霧切さんと学園長の関係は何なんだだろう。本人もそれを知りたいみたいだけど。



「…どちらにしても、すぐに結論の出る問題ではなさそうだな…」



今日はこれ以上の収穫はないと解散することになった。ジェノサイダーになっていた腐川さんがくしゃみで元に戻ってパソコンの前で待てをしようとしてたけど、それは放っておくことになった。私としては都合はいい。



「胸がドキドキ…ドキドキ…怒りで、胸が"怒気怒気"してんのッ!!」



まぁ、現れるよね。これだけ長い時間十神くん以外の全員が脱衣所に入ってたんだから。何か話をしてるのをわかってて入ってこないんだから大したもんだけど、それをこうして待ち伏せて怒るのはやめて欲しいかな。



「ま、まだ学園長室の件を引きずってんのか…?」
「あの件は関係ありません…それに、オマエラだけで淫らな混浴を楽しんだ事にも、嫉妬はするけど、怒ってはいません…ワクワク…ワクワク…怒りで頭が"沸く沸く"してんのッ!!」



かなりのご立腹のようだね。怒るくらいなら最初から混浴を禁止にすればいいのに。一生ここで暮らせっていうのだから男女交際に口を出す気はないんだろうけどさ。



「脳内メモにインプットしとけよ。ボクは、やられたらやり返す子なんだよ。メニワ・メオ…ハニワ・ハオ…」
「メニワ・メオ…?ハニワ・ハオ…って?き、気を付けろ!崩壊の呪文を唱えてったべ!」
「目には目を歯には歯を…と言ったのだろう」



モノクマは面倒くさい捨て台詞とともに去って行き、夜時間を知らせるチャイムが鳴った。今日はこれで解散とみんな各々の部屋へと帰っていく。



「…さてと、行くかな」



問題はこの時間に行って相手してくれるかなんだよね。出て来なかったら明日にすればいいかな。



「……あ、出て来た」
「貴様…俺を馬鹿にしてるのか…」



インターホンを押して間もなくドアを開けてくれた十神くん。時間が時間なだけにドアを開けて出て来てくれないと思ってたけど。



「ゴメン、ゴメン。休んでるかもしれないと思ってたからね」
「まぁいい。用はさっさと済ませろ」



これは部屋の中に入っていいって事かな。お邪魔します、と中に入る。自分の部屋にレッドカーペット敷いてるんだ。思ったより物の無い部屋だな。本とかもっとあるかと思ったけど。



「何を見ている。お前は何をしに来たんだ」
「話なんだけど…どうしようかな」



正直なところ監視カメラの前で話したくはない。だからと言ってまた脱衣所に行くわけにもいかないし。意を決して話すしか無いのかな。



「……来い」
「へっ?と、十神くん!?」



腕を引かれて連れていかれたのはシャワールーム。ドアも閉められて、狭い空間に閉じ込められる形となった。



「これなら話ができるだろう」



そういう事か。シャワールームには監視カメラは無い。ここならば監視カメラを気にせず話ができる。



「……変な事を聞くけど…私とキミは、この学園で閉じ込められたあの日に初めて出会ったんだよね?」



こんな事を聞くのはどうかと思っている。私がそれを問うのはおかしな事だろう。だけど確認しなくてはならない。



「当然だ」
「だよねー」



答えなんてわかりきっていた。だけど、あの記憶は何だったのか。モノクマによって植え付けられた偽の記憶なのか。もう一度、音楽室へ行って見るべきだったかな。それとも別の人だったのか。



「城戸。話はそれだけか」
「うーん、まだあるけど…っ」



まただ。何かを思い出そうとすると頭痛に襲われる。植え付けられたかどうかはともかく、記憶が弄られている可能性はあるようだ。物質的証拠は何1つないけど。



「…アルターエゴから黒幕の事は?」
「学園長が怪しいというやつか」



さすがに知ってたか。アルターエゴが言わないわけがない。



「4階は見に行ったのかい?」
「俺が行かないわけがないだろう」



ごもっともです。ならば改めて話す事はないか。もう少し自分で調べた方がいいかな。ただモノクマがそれを許すかだけと。



「……ゴメン、邪魔したね」



霧切さんじゃないけど学園長があらゆる意味で鍵を握っているのは間違いない。確認しなくてはならない。十神くんの脇を通り抜けてシャワールームから出ようとした…けど、肩を掴まれてそのまま壁へと押し付けられる。



「なんの、つもりだい?」



肩と背中が痛い。頭1つ分以上背の高い彼を睨むように見上げる。彼の眼鏡の下の瞳も同じように私を見下ろしている。



「何を企んでいる?」
「企んではいないよ」



ああ、なんかおかしいな。私はどうしたいのだろうか。この話をしに来た意味はあったのか。先に霧切さんに話しておくべきだった。けど、今日の彼女の様子じゃ話しても無駄だっただろうし。



「なら、何を焦っている」


鋭いなぁ。そういうところも変わらない……誰が変わらない?私の中の記憶が一致しない。もやががったそれが、私をおかしくする。



「……ははっ、キミは本当に……」



目が霞む。音も聞こえない。意識が、遠のく。本当に、困ったな……










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