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「おのれ…守れなかったか…!」 すぐにみんな集まり、変わり果てた聡莉さんを見て拳を震わせる大神さんと石丸クン。 「…と言うことは、また始まるのですね」 セレスさんの言葉にボクの体はビクッと震えた。数日前にあったばかりのあれが頭に過ぎる。山田クンは現実を入れられないのかよくわからない言葉を発していた。壁に血文字で書かれた"チミドロフィーバー"とが目に入った。 「ダイイングメッセージとも違うわね…異様…過ぎるわ…」 「というか、血文字で"チミドロフィーバー"って…何か聞いたことがないか?」 石丸クンの言葉にふと、先日、十神クンが言っていた事を思い出す。猟奇的かつ残忍な手口で殺人を繰り返す、凶悪殺人鬼の存在を。 「…ジェノサイダー翔だべッ!!」 葉隠クンが発した名前にみんなが一瞬ざわつく。巷をにぎわしている凶悪殺人鬼で超ド級の…変態殺人鬼。 「じゃあ、これって…誰かがジェノサイダー翔の事件を真似たって事…?…でもなんの為に?」 「あるいは…本物のジェノサイダー翔の仕業か…」 十神クンの本物発言に驚愕の声が上がる。有り得ない、という言葉まで上がる。ボクも俄かに信じがたい。 「それにしても"チミドロフィーバー"とは…びっくりしてしまうほど頭が悪いですわね」 「だが、頭の悪い人殺しほど厄介な存在もあるまい…」 壁の血文字を見て溜息を吐くセレスさん。そこに朝日奈さんが、あ…!と突然大声を上げた。 「腐川ちゃん…!」 朝日奈さんが指さした先をみんなで一斉に見ると、女子更衣室の入り口に、目を見開いて驚いた顔で立ち尽くしている腐川さんの姿があった。 「…?????うううううそ……ど、どうして…どうして…?ど…う……し………て…………どおしてぇぇぇぇぇぇえええええええッ!!」 すごい奇声を上げて腐川さんはゴドンッッ!!と大きな音を立ててその場に倒れてしまった。 「倒れたべ!しかも、確実にマズイ音がしたぞ!」 「ふ、腐川ちゃん!!」 朝日奈さんは、倒れた腐川さんに慌てて駆け寄ると、彼女の体を揺すり始めた。 「腐川ちゃん、大丈夫!?しっかりしてッ!」 「そう言えば、彼女は言っておりましたな。血を見ると気絶してしまうと…」 「血液恐怖症ですか…ホラー映画は見られませんわね」 そういう問題なのかな…けど、頭を打ってるならかなり心配だ。朝日奈さんが一生懸命に起こそうとしているけど、まだ目を開けることはない。 「つーか、これって大丈夫なんか?自分の部屋以外で就寝って…校則違反じゃね?」 「いや、それは大丈夫なはずだよ…校則で禁止なのは、"故意の就寝"だったし…」 腐川さんのは気絶で故意じゃないから大丈夫なはず。朝日奈さんが声をかけ続けると、彼女の言葉に応じたかのように……腐川さんは飛び起きた。飛び起きたのだが…その奇妙な動きに、ボクは思わず絶句してしまった。 彼女は寝ながらの姿勢のまま垂直に飛び跳ねると、空中で姿勢を変え…そして、その場に立ったのだ。筋肉の構成を無視した、まるでデタラメな動きだった。 「え…?え…?」 「ごめんごめん、びっくりしすぎて気絶しちった。あるよね、そういう事。あれ私だけ?」 「ふ、腐川…さん?大丈夫…?」 恐る恐る声を掛ける。なんかいつもの腐川さんじゃないみたいで、少し怖いんだけど。 「ダイジョーブ、ダイジョーブ!ゲラゲラ…!あ、死体だ!おいっ、そこ死んでるぞ!ゲラゲラゲラ!」 死体を目の前にしていると言うのに腐川さんは笑っていた。やっぱ…頭を打ったのがマズかったべ…と葉隠クンも心配の目を向ける。その間にもよくわからない事を言っている腐川さん。 「なんかコワいし…というか、口調が変わってません?」 「いやいや心配ござらん!むしろ、噛み口調がなくなったなんて…ラッキーなんじゃね!?ゲラゲラゲラ!!」 「なるほど、大丈夫ではないと理解したッ!目も妙にうつろだしな!」 普段とは全く違う腐川さんにみんな戸惑いを隠せないでいる。 「…ひとまず自室に連れて帰ったほうがよかろう」 「だったら、私が連れてくけど…誰か手伝って…」 頭を打ったせいでおかしな言動をしているとボクらは思い、大神さんが部屋へと連れて帰った方がいいと提案する。それを朝日奈さんがしてくれると。ただ誰か手伝って欲しいとボクらを見回す。 「手伝いましょうか?」 「石丸、手伝ってくれる?」 山田クンが眼鏡の位置を直しながら自分が手伝うと言うけど、朝日奈さんは山田クンには目もくれず、石丸クンにお願いする。石丸クンも頷いて了承する。 「では、その女の事は任せて、残った者でさっそく捜査を開始するぞ。現場の見張りは、前と同じように、大神と大和田の2人で問題ないな?」 「ちょ、ちょっと待ってよ。そもそも…捜査って…」 突然捜査をすると言い始める十神クンに振り返る。十神クンは当然だと言わんばかりに、腕を組みボクらを見下ろすように見ていた。 「…言っておくが、黒幕の仕業なんかじゃないぞ。それは前回の件でわかったはずだ」 フンと鼻を鳴らす彼にボクは何も言い返せなかった。 「城戸聡莉は間違いなく殺されたんだ。"俺達の誰か"にな……そうだろ?モノクマ」 「もっちろんッ!だけど、悪い事じゃないよ。これって当然のことなんだから。だってさ……それが『卒業』のルールなんだもんッ!」 十神クンに呼ばれて突然現れるモノクマ。それは嬉々としたものだった。じゃあ…またなのか…?また…そうだって言うのか…?また…ボクらの誰かが…ボクらの誰かが…仲間を…殺した……? 「おや、またビビってんの?気持ちのちっけぇヤツらばっかッスね!」 ケラケラと笑うモノクマ。腹立たしいけど、コイツに何を言っても無駄だだ。 「御託はいい。さっさと例の物を貰おうか。持ってきているんだろう?」 「へっへっへっ…もちろんですともッ!それでは毎度おなじみになりつつある、ザ・モノクマファイル2を配りまーす。じゃあ、捜査を頑張ってくださいね!」 そう言ってモノクマは去っていった。 「捜査って…また、またあんな事しなきゃいけないの…?仲間の…死体を調べたり…仲間を…疑ったり…もう嫌だ…こんなの耐えられないよ…」 「俺もイヤだぁー!!お、お、お、俺はごめんだ!!もう逃げるぞッ!!」 「どこに逃げる気だ。逃げ場などないのだぞ」 この状況に朝日奈さんと葉隠クンは限界が来ているようだ。ボクも…彼らの言いたいことはよくわかるから。 「…いい加減慣れたらどうだ?しょせん血は液体。死体は物じゃないか…」 そんな事を笑いながら言う十神クン。 「随分と張り切っておられるのですね?」 「張り切らないでどうする?犯人を突き止めなければ死ぬんだぞ」 そんな十神クンのボクが戸惑いを露わにすると、辛辣な言葉を浴びせられた。 「死体は…物だと…?アイツは…城戸は物なんかじゃねーぞッ!!軽々しく扱いしやがったらオレが許さねーからなッ!!」 「安いケンカはやめて…それに、十神君の言葉もあながち間違ってないわ」 謎を解いて犯人を見つけなければ自分自身の命が危ういのは確か。もし聡莉さんを殺したのがジェノサイダー翔だったら新たな被害者が出てしまうかも、と霧切さんは続けた。 「さ、更なる犠牲者どころか、下手すれば全員みな殺しに…ッ!」 「おっとっと、それなら心配ご無用ですぞ!このころ試合学園生活で"同一のクロが殺せるのは2人まで"なんで!」 また現れたモノクマがそんな事を言っル。1人でたくさん殺しちゃうと楽しい学園生活がすぐに終わってしまうから。しかも1人じゃないのは、"連続殺人事件勃発"が捨てがたく、1人じゃ連続にならないしね!とまた消えた。 十神クンは捜査する気満々だし、大和田クンはイライラしてるし、大丈夫かな。 「と、とりあえず…私と石丸は、腐川ちゃんを部屋まで送ってくるね」 「送られてきまーす!」 腐川さんは朝日奈さんと石丸クンに連れられて行った。ボクは…いや、ボクも覚悟を決めなきゃならないんだ。 |
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