君に夢中







はてはて、私は一体どうしたらいいんでしょうか?





困った。困ってるんだけど、他人から言わせれば贅沢な悩みらしい。と、後輩に言われた。それでもどう接していいかわからないし、どうしたらいいのかもわからない。考えれば考えるほど頭痛がしてならない今日この頃。



「みょうじ」
「あ、緑川君。何か用?」



私の頭痛の種の一人、緑川リュウジ君。元エイリア学園のジェミニストームのリーダー。選考会で再会というか、まあ改めて顔を合わせたときの彼はあの時の面影は何もない。作ってたんだよー、なんて軽く言われ唖然としたのは覚えてる。話してみれば優しくて楽しい人。サッカー選手が駄目になったら俳優になれるなーとか思ったこともある。



「考えてくれた?」
「……答えたはずだけど?」



私の真正面に立ち、にっこりと笑う。やっぱりその話だったかと溜息が出そう。



「諦めないって言ったと思うけど」
「それが困るって言ってるだろ?」



一歩下がれば一歩近付く彼にどう対処しようかと頭を働かせてると誰かが私の肩に手を置き、代弁するかのような言葉を口にした。誰か、と言っても声でわかってしまうのだから誰かとは言わないな。



「邪魔すんなよヒロト」
「みょうじさんが困ってるだろ」



もう一人の悩みの種が現れた。基山ヒロト君、エイリア学園ジェネシスのリーダー。彼は戦う前から何度もキャプテンに接触してた、父親想いの優しい人。ちょっと優しさを履き違えて気もするけど。基山君は元の姿でも全く変わらない。でもね……



「みょうじさんはお前とは付き合わないって」
「ヒロトには聞いてない」



あー、また始まった。逃げたしたいけど前には緑川君。後ろには私の両肩を掴んだままの基山君。どうやっても逃げられない。普段は仲がいいのに私がいるとこうなんだよなぁ。私が悪いの、かな?いやいや、ちゃんと返事はしたわけだし。



「二人とも。私はちゃんと言ったよね?」



二度も三度も同じ事は言いたくはない。でもいくら言っても聞いてくれない。最大の悩みの種。



「私は誰とも付き合う気はない!今はサッカーが一番!って」



腹の底から声を出せば目の前の緑川君は目を大きく開ける。後ろの基山君もビックリしたのか私の肩から手を離した。まあ、普段はこんな大声なんて出さないから驚くのも無理はない。



「それより気になってたけど。二人とも私の何処がいいの?」



秋ちゃんは春奈ちゃんに冬香ちゃんみたいに可愛いわけじゃない。夏未さんのように美人なわけでもない。リカや塔子みたいに元気があって憎めないキャラってわけでもない。そんな私の何がいいのかイマイチ理解できない。好き、って言われてもそれ自体がわからない。



「そんなの」
「なあ」



二人の顔が見えるように体の向きを変える。私の言葉に基山君と緑川君は互いに顔を合わせて頷く。



「みょうじが」
「可愛いからだよ」



何当たり前のこと言ってるの?と言う二人に私は目をパチパチさせながらはいぃ?と何ともマヌケな声を上げる。誰がどう可愛いと言うんだろう。



「それがわかんない。だってこれだよ?」



みんなとは違って私だけ制服もジャージも長袖。秋ちゃんたちみたいなハイソックスではなく私一人ニーハイソックスを履いている。その理由となるものを彼らに見せる。ブラウスの左袖を捲り、右のニーハイソックスを膝下まで下ろす。そこには自分でも目を覆いたくなるような傷跡。すごく大きい訳じゃないけど女の子としては致命的でしょ。



「話は聞いてると思うけど私は前に大きな事故に遭いました」



雷門のみんなにはFFFが終了したころに話している。というか決勝の前に私は転校してきた。そこで転がっているボールを見つめてる所を声を掛けられてマネージャーになった。



「もうプレイは出来ない。でもみんなの支えになりたい」



前の学校ではサッカー部に所属していた。けど事故で二度とサッカーは出来ないと言われた。ちょうど父親の仕事の都合で転勤となりこの稲妻町に引っ越した。サッカーには触れたくなかったけど、楽しそうにプレイをするみんなを見て今度は違う形でサッカーに関わりたくなった。事故に関しては一之瀬君も似たような境遇で驚いたのも覚えてる。



「やっと、慣れてきたんだ。だからまだ余所見してる場合じゃないの」



これから行われるFFI予選に向けてみんなをサポートしていきたい。エイリア学園との戦いの最中に覚えたマネージャー業。まだ秋ちゃんと春奈ちゃんについて行くので精一杯。誰か一人を見てるのは無理。



「今はみんなと一緒に戦いたいの」



ダメ?と問えば黙り込む二人。きっぱり嫌いとかそう言うのが言えればいいけど嫌いじゃないし、前の戦いを経てようやく本当の彼らと話せるようになった。これから知っていく、触れ合っていくのはダメなのかな?



「君には適わないね」
「そう言われたらダメだなんて言えないじゃん」



二人同時に息を吐いて、ふっと笑みを浮かべる。かなりムチャクチャなことを言ってるのに、やっぱお前なんかいいやとか言わないのが優しいね。私なんかにはもったいないよ。二人ともカッコいいし。



「ごめんね」



私に余裕が出来たら、どちらかを誰かを好きになるのかなぁ?それとも別の人かな。イナヅマジャパンのみんなカッコいいからなぁ。



「それならみょうじが振り向いてくれるまで」
「僕たちは頑張るだけだね」



にっこりと微笑まれてしまった。あーもー!好き嫌い関係なしに二人ともカッコいいよ!って叫んでやりたい。口にはしない代わりに私は二人の腕取った。








(えっ?)(へっ?)(ふふっ♪)

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