事後、ヨシカはいつも手ひどく扱われたような顔をするので、アカギは納得がいかなかった。上手い下手には関心がなかったにしても、そんな顔をされるのはどうも気に食わない。汗を吸って重たくなった布団に固くくるまってこちらに背を向けるヨシカの、微かに垣間見えるつむじを眺めながら、胡坐をかいて煙草を吸う。まるで犯されたみたいなそぶり。布団の上からあたりをつけて肩を掴むと、骨ばったそれはひどく強張っていた。


「なんだよ」
「……ごめん」


身体同様、かたくなだった。むりやりこじあけてやろう、そう必要な分の息を吸い込んだとき、ヨシカの方から滑りだすようなささやき混じりの声で喋り出す。


「やっぱり、べつのいきものなんだね」


どんなに内側はおんなじでも、外側がこんなにちがったら、なんていうか、さみしい。
めんどくせえ、とアカギの内心は正直に白状した。つまり体だけだと、そう言いたいのか。にわかにささくれ立つアカギのことなど知る由もなく、ヨシカはもぞりと身じろぎしてさらに綿の鎧をかためる。


「お前だけだ、とか言われてえの」
「ちがうよ、ちがう。ただ、男同士とか、女同士だったら、もっと純度の高いものだったのに」
「なにが」
「…かんけい」


それをどんなツラで言い放っているのか知りたくなって、肩に置いたままだった手に力を込めて引く。ころり、と特に抵抗もなく転がってこっちを向いたヨシカの顔はどこか虚ろでやるせない。


「あなたのこと、そういう意味で好きになりたくなんかなかった」
「……そういう意味じゃなきゃできないことでもないだろ」


なにをそんなに不安がることがある。たばこの火だねが指先に近づいてじりじりと熱くなっても、アカギはヨシカの目を見つめ続けた。伝えたいことがあったのではない、その奥の方まで覗き込みたかったからだ。


「逆だよ。薄まっちゃうんだよ、体はもっとはっきりしてるから。気持ちなんてものよりも」
「………クク、そういうことか」


この行為をアカギは欲情などではなく、もっとも自分に似つかわしくない感情からくるものだと思っていた。しかしヨシカはそれを喜ばない。そんな、何かに目をつぶったようなぬるい関係では満たされないのだ。もっと奥まで、もっと根源まで、それが痛みを伴うとしても、その先に待つのが不都合で残酷な事実であっても、暴きたてなければ安心できないのだ。そんな馬鹿げた繋がり方しか信じられないなんて、呪われているとしかいいようがない。とんでもない潔癖の、臆病者。なるほどよく似ているわけだ。まるで、そう、博打。

いくらも吸わないうちに短くなったタバコをためらいなく灰皿に押しつける。教えてやろうか、犯されていると思っているのだろうが、お前もまた俺を犯しているということ。これだから処女は困る。