ツイッターになりつつある、私の呟きでございます




おりじなるのネタ
2014/12/05 23:45

薄汚れた上着を羽織った、十七歳ほどの青年が、深くフードを被り、あらゆる町を回って行く。
そして路地裏などで見つけた、両親を亡くし、餓死しそうな幼子を捕え、人身売買やあらゆる密売を行う地下街へと連れて行く。
子どもがたとえ気性が荒いとしても、餓死しかけているため、無抵抗で腕を引っ張られる。


やりやすい。子どもは本当に楽だ。
このまま上司に渡してしまえば、自分の仕事は終わりだ。


この〈人狩り〉という仕事を始めて、一体何年という時が経つのだろう。

もう、罪悪感すら感じなくなってしまった。
自分はすでに、人間ではなくなってしまったのだろうか。







そんな〈人狩り〉青年と








幼い頃、山のふもとの集落で暮らしていたが、その山が突然噴火し、噴石が飛び散った。
ふもとにあった我が集落にも、その噴石は落下した。
人々の泣き叫ぶ声が聞こえたが、ただ自分は、必死に山から降りようとする母親の腕に抱かれていた。
母は涙を流しながら、ただ生きるために、我が子を守るために、かけていた。


しかし大きな噴石は、母の想いをくみ取ることもせずに、母の背中に目がけて飛ぶ。
幼き少女はただ、それを見つめていた。


「お母、さん」


震える声で母を呼ぶ。
母はそれに答えることなく、噴石に当たって、大きく跳んだ。
母の腕に抱かれた自分の体も、大きく跳ねる。母の腕は、力なく自分を離した。この小さな体は、宙を舞って、草むらへと落下する。


眼を僅かに開いた。
霞んだ視界に映ったものは、幾つもの大きな噴石と、その中で倒れたまま動かない母の姿。

手を伸ばした。



お母さん。お母さん。
痛いよう。痛いよう。助けて、お母さん。




心中でどれだけ叫ぼうが、母にこの声は届かない。

徐々に瞼が閉じていく。体の自由が利かなくなる。
少女はだらしなく腕を下ろして、意識を手放した。



そして次に目を覚ますと、埃臭さが鼻をついて、小さくくしゃみを零す。
視界は夜のように仄暗く、はっきりと辺りを見回すことはできない。
少女は横になったままの身体を起こそうと、地面に手をつく。


聞き慣れない、じゃらりという、鋼と床が擦れるような音が聞こえた。
少女は驚きながら、音がした己の腕へと目を向けて、更に目を見開く。

己の手首には、鎖がつけられており、その鎖の先には球体の大きな錘がついていた。


すると突然どこからか、声変わりしていない、少年の高い声が聞こえた。



「あんたはもうすぐ、売られちゃうんだ」



視線を上げると、仄暗い部屋の奥から、小さな足音と共に、自分と同じ年ほどの少年が顔を出した。少年の澄んだ瞳から、目を離せなくなる。



「あんたは、売り物になったんだよ」



悲しそうな彼の瞳は、まるで何も映してはいなかった。







売り物になってしまった少女

ふたりの革命家のお話



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いつか書けたらいいなと思います

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