思わず目をとじた。
沈んだ気持ちは、さらにまた深く、深く落ちてゆく。
底などない。
裏切られた気分だった。

(なにに)

(だれに)

ただ自分を過信しすぎていただけじゃないか。
なんとかなる、どうにかなる、とひたすらに前を見ていた自分に、唐突に真実がつきつけられたのだ。
誰のせいでもない。
火が水で消えるように。
太陽が沈み夜がくるように。
もともと、そう決まっていたのだ。
強くなりたい、ただそれだけなのに。

落ちることは容易かった。
付け入ろうとしているのは分かっていたけれど、目の前に用意された可能性に、拒否する考えは一切なかった。

彼の声を、再び聞くまでは。

「風丸」

なぁ、何とかなっただろ。
あんなにひどい戦いを終えたあとなのに。
何でもなかったかのように彼はそこに居た。
強くなりたかったのは、どうして。
あの日のことを今も覚えている。

「サッカー、やろうぜ!」

引っ込めようとする手を無理やり掴んで、彼は、声をたてて笑うのだ。



ここは暗闇ではありません

それは、閉じた瞼の上からでも分かる、強烈な光。







無理やり終わる。
サッカーやろうぜって言わせたかっただけ。
20100325
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